第1話 核心
―――とある昼下りのふたり
「なぁ、大丈夫なのか?」
「んん? それは、カホの事かな?」
「……あぁ」
「初詣でも言ってた通り、恋に溺れる事なく学業にサークル活動にバイトにとキャンパスライフを満喫してるわよ」
「そういう事じゃなくてだな」
「ちゃんと言ってくれないとわからないなー」
「あの男は……どうなんだ?」
「昨晩の様子で一目瞭然じゃない?」
「むぅ……」
「出張で疲れてるだろうに車走らせて送ってくれた上に開口一番の謝罪とか、ね。私が彼だったら、連絡だけはさせてこれ幸いと泊めちゃうな」
「あのなぁ……」
「箱入り娘さんは恋愛たるものが解ってきた分、焦らされて多少やきもきしてるようですけど」
「思った以上に歩みが遅い、といったところか」
「御名答! そんなあなたにクッキーをプレゼント、安心した?」
「したはしたが、我が娘に魅力無し、と言われてるようで癪に障るな」
「もしそうならばとっくに終わってますよ」
「しかも罪悪感などと言おうものなら、張り倒す」
「JK見初めた後ろめたさ、ね。それは有り得るかも知れないけど、だからこそ、なのかも」
「見た目通りのチャラい奴ならば即座に切り棄ててやるが、厄介だな」
「ちなみに合気道有段者だそうよ、逆に締め上げられるわね」
「タッパばかり有っても役立たず、か」
「でも圧は感じてるらしいから、そうとは言い切れないんじゃない?」
「だとしたら、してやったりだがな。さて、どうなることやら」
「ふふふ、何だかんだ言っても……なのね」
「むぅ……コーヒーのおかわり、淹れるか?」
「あら、ありがとう、あなた♪」
◆ ◆ ◆
―――とある昼下りのふたり
「なかなか弱いところを見せませんね」
「周りに聞けば判るけど相当曝してるよ?」
「んー、情けないと弱いは違うんだな」
「言うねぇ。露見しないとしたら、それは男のつまらない矜持ってヤツですよ」
「何処かで発散してるならいいんですけど」
「あはは! 思ったことは口にする性格だし、正直そういうのは溜まらないよ」
永遠に近付けないものがあるせいで、思わず抱えて吐き出す不安。
洩れなく取り除いてくれるその優しさに甘えてばかりで、返す術が見付からない自分がもどかしい。
守られるだけじゃなく、わたしも守りたい。
せめて、あなたの中に潜んでいる弱さを聞くことだけでも出来たなら。
そうしたらまた一歩あなたに近付けるのに。
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