流石オリヴィア様です!
俺の名前はルーカス・ハワードだ。
ハワード家の長男であり、次期当主でもある。
そんな俺は、自分で言うのもアレだが顔は良い方であり、勉学、体術も他の者より出来る方だ。
その為か、数多の女性が俺の元へやってくるのだが、如何せんどうも素敵な方に巡り会えないでいた。
そう、オリヴィア様がこの屋敷に来るまでは。
オリヴィア様は俺が見た事もない様な女性だった。
俺より歳が2つ下であるが、それをものともしない態度、何より俺に対して敬語を使わない。
色目も使わない。
何でも物怖じせずにハッキリと思ったことを言うとても素直な方だ。
そして、そこが彼女の良さでもある。
俺はそんな彼女に心を奪われてしまった。
俺は彼女以外恐らく愛せないだろう。
俺の頭の中は最近はオリヴィア様でいっぱいだった。
そして、俺に今人生最大のチャンスが訪れた。
何と、オリヴィア様と一緒にデートすることになったのだ!
ことの発端は今朝、オリヴィア様が買い物に行きたいと言った時、俺が率先して護衛役を買って出たのだが。
何はともあれ、オリヴィア様とのデートである!
そして、俺とオリヴィア様は馬車で街の方へと向かっていた。
もうすぐ着く頃だろう。
「さあ、オリヴィア様!
ご存分に好きなものを買ってください!
俺が何でも奢ります!」
「いや、お金は渡されてるし、別に高価なものを買うわけじゃないから」
オリヴィア様はそう言って馬車を先に降りようとするので、急いで俺が先に降りてエスコートする。
何だかオリヴィア様が心底嫌そうな顔をしているが、それはそれで良い!
「はぁ、別に成り上がりで貴族になった私にそこまでしてくれなくてもいいのに……」
「何を仰られるのですかオリヴィア様!」
オリヴィア様の言葉に、ついカッとなってしまった。
「オリヴィア様が今まで下町で暮らしていたことの方がよっぽど信じられません!
その美貌を持ったまま、よくぞご無事で……」
「あー、はいはいもういいから店に入るわよ」
オリヴィア様は俺の言葉に軽く返事をしながら何やら手芸店へと入っていった。
お店はこじんまりとしているが、中に入るとあたり一面布やら糸やらが色々と並んでいた。
「おお、品揃えが良いのだな」
俺は普段この様な店には入らない為、とても新鮮な景色に見える。
オリヴィア様は早速糸を物色していた。
「何か編まれる予定ですか?」
俺がそう訊くと、オリヴィア様は素っ気なくも答えてくれた。
「ええ、まあ趣味程度にね。
貴族でも刺繍くらいはするでしょ?」
俺はそこで気づいた。
オリヴィア様はもしかして誰かにプレゼントする為に刺繍をするのではっ……!?
もしや、俺の為に……!
「いやぁ、オリヴィア様、何ともありがたいのだが、怪我だけはなさらぬ様気をつけて下さい」
俺は自分で出来る最大限のスマイルでオリヴィア様にそう告げた。
「え? あんたに言われなくても気をつけるわよ。
別に刺繍だって初めてではないし」
そしてオリヴィア様は青やら紫やらの糸を選んでいた。
これは間違いなく、俺宛だろう!
何故なら、俺は色では青が好きだから!
きっと俺の為にどこかでリサーチしてきたのだろう。
何ともありがたい話だ!
オリヴィア様はどうやら買う物を決めたらしく、颯爽とレジに向かっていた。
きっと俺に贈る為に急いでおられるのだろう。
ああ、その後ろ姿を見るだけで、何とも愛おしい。
そしてオリヴィア様は買い物を済ませて戻ってきた。
「さ、もう用は済んだしさっさとお屋敷に帰りましょ」
「はい!」
きっとオリヴィア様は早く俺へのプレゼントを縫いたくて仕方ないのだろう。
俺がまた馬車へオリヴィア様をエスコートしようとしたその時だ。
「え? ルーカス様?」
聞き覚えのある女性の声が背後から聞こえてきた。
俺はゆっくり振り返る。
オリヴィア様も何事かと振り返った。
声の主は、俺の予想した通りだった。
「……シーラ様」
そこには、栗色のセミロングの髪に青い瞳の綺麗な女性が立っていた。
「ルーカス様、その隣の女性は誰?」
シーラ様の顔は少しずつ怪訝な顔になっていく。
「ねえ、あの女性はあんたの知り合い?」
オリヴィア様も少し怪訝な顔をしていた。
ここは、きちんと説明した方が良いだろう。
「あ、オリヴィア様、こちらの女性はシーラ・ハンネル様です」
俺が説明すると、シーラ様はニコリと笑みを見せてドレスの裾をつまみながら挨拶した。
「初めまして、私ルーカス様の許嫁のシーラ・ハンネルと申します」
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