番外編 白雪姫
オリヴィア、エマ、ノア、ルーカスの4人で白雪姫をやることになりました。
「唐突過ぎないっ!?」
オリヴィアは突っ込むが、他の3人は割とノリノリだった。
配役はオリヴィアが悪い魔女。
エマは白雪姫。
ルーカスは王子様。
ノアは鏡。
それでは白雪姫の、はじまりはじまり~!
「まあ、いいわ。やれっていうならやるわよ」
オリヴィアは渋々黒いローブを身に纏った。
「鏡よ鏡。世界で1番美しいのは誰?」
すると目の前の鏡の裏から、返事が返ってきた。
「それはもちろん、オリヴィア姉様です!」
「うん、知ってた」
私ははあ、と大きく溜め息を吐く。
「あ、オリヴィア姉様も自分の美しさに気付きました?」
「いや、そういう意味じゃなくて!
そこは白雪姫って言わないと話が進まないのよ!」
私が怒るも、ノアは更に強い口調で言い返してきた。
「例え演技でも僕は嘘をつきたくないです!」
「いやそれもう演技出来ないじゃない!」
しかしノアは頑なに白雪姫と言わないので、仕方なくそのまま演技を続けることにした。
「……分かったわ。じゃあ1番は私でもういいから、2番目に美しいのは?」
するとノアは少し考えてこう答えた。
「それは美しいオリヴィア姉様をこの世に生んでくれたお義母様ですかね?」
「そこはエマって言えよ!
実の姉を言え!」
私がまたもキレると、ノアはまあまあと宥めてきた。
「エマ姉さんは4番目ですかね?
あ、因みに3番目はメアリーです」
ここで注意しておきたいことは、勿論エマは外見はとても良い方だ。
まあ、メイド長のメアリーも歳を感じさせない美しさがあるのは確かだが。
しかし、ここでちんたらしていても埒があかないので、無理矢理演劇を続けることにした。
「じゃあ白雪姫は4番目に美しいのね。それなら私はライバルを蹴落とす為にこの毒林檎を渡しに行くわ」
私はそう言って森(お屋敷の庭)へと向かう。
「あら白雪姫さんご機嫌よう」
「嗚呼、オリヴィアちゃんから私に挨拶をしてくれるだなんて!」
挨拶しただけで感激されてしまった。
普段は絶対私から挨拶なんてしないけれど。
まあ、いいやと私は劇を続けることにした。
「この美味しそうな林檎を差し上げましょう」
「まあ! オリヴィアちゃんからのプレゼントだなんて!
一生の家宝にするわ!」
エマは何やら感激しながら私から受け取った毒林檎を両手で大事そうに抱える。
「いや、家宝にしたら腐るから!
食べてくれないと困るのだけれど!」
そうオリヴィアは突っ込むが、もはやエマには聞こえていない。
「ああ、この林檎をついさっきまでオリヴィアちゃんが持っていたのよね。
手汗とかついていないかしら。
指紋とか……はっ! 私ってば素手で持ってしまったわ! なんたる失態!
今すぐ綺麗なレースのハンカチに包んで大事に保管しなくては!」
「いやだから食べろって!」
しかしエマは一向に食べる気配を見せない。
こうなったら奥の手だ。
「分かったわ。じゃあ私が食べさせる」
その方が手っ取り早い。そうオリヴィアは考えた。
「え、えええぇぇっっ!!?」
エマはそれを聞いて凄く驚いている。
私が毒林檎を持つと、エマは顔を赤らめた。
「そ、そんな、オリヴィアちゃんが食べさせてくれるなんて……♡」
なんか周りにハートが飛んでて気持ち悪いので、さっさと食べさせようとすると。
「ちょーっと待ったー!!」
すると後ろからルーカスが現れた。
「エマばかりズルい。
俺もあーんで食べさせて欲しい」
こいつは何を言っているんだろう?
「てか、あんたまだ出番じゃないでしょ?
エマが林檎を食べて寝たら、あんたがキスするんじゃないの?」
「残念だが、俺のファーストキスはオリヴィア様の為にとっておいてあるのさ!」
ルーカスは何故かキメ顔でそう言ってきた。
すごく鬱陶しい。
というかそんなに美形なのにまだファーストキスすらしていなかったのかと思う。
いや、性格的に仕方ないことなのかもしれないが。
「あーら、ルーカス兄様?
邪魔しないで下さらない?
今は私がオリヴィアちゃんに林檎を食べさせて貰う時間なのよ?」
と、エマは早くと言わんばかりにこちらに口を突き出してきた。
「そもそも白雪姫は悪い魔女から林檎を貰うだけで食べさせて貰っていないぞ」
「そーだそーだ!」
気付いたらノアまで参戦していた。
「多少のアドリブがあってこそ面白いんじゃない?
相変わらずルーカス兄様は頭が固いわね?」
「何をーっ!?」
すると何やら兄弟喧嘩が勃発しだした。
これではもう劇は続けられないな、と私は黒いローブを脱ぎ捨てて、3人を置いて自室に戻ることにした。
するとメアリーが後ろから声をかけてきた。
「楽しかったですか~?」
にこやかにそう尋ねてくる。
「疲れただけですけれど」
私は少し口調を尖らせてそう答えた。
メアリーはあらあらといった感じ口を開く。
「でも悩んでるよりはマシじゃないですか?」
恐らくメアリーは私の心中を察しているのだろう。
私は、はあ、と溜め息を吐く。
「……悩みのタネが増えたわ」
「あらひどい」
そうクスクスとメアリーは笑って言った。
「……あの3人は悪い子達じゃないんですよ?」
それは、最近確かにそう感じてはいる。
自分が意地になっているだけな気がする。
でも、何かあってからでは遅いのだ。
確証を得るまでは信じられない。
私が黙っていると、メアリーに頭を撫でられた。
「ちょっと!」
「ふふ、難しく考えすぎない様にして下さいね。
人間心が大事ですから」
何やら諭された様だ。
そしてメアリーは仕事に戻っていった。
「……私は」
一体どうすればいいのだろう?
しかし答えのない疑問を考えても意味がない。
私は自室で予習でもすることにした。
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