とっても可愛らしいですわ!
私がお屋敷にきて早1ヶ月が経った。
「はあ、何だか疲れが増す一方だわ……」
私は一生懸命冷たくあしらってるはずなのに、あの兄弟3人はものともせず私の元へズカズカとやってくる。
私にはそれが理解出来なかった。
あの3人は私が貴族扱いしなかったことを喜んでいたが、実際貴族扱い以上に酷いことをしていると思うのだが。
そこまで私に入れ込む理由は?
周りの人達に私みたいな性格の悪い奴とも仲良くしようとしている私達優しいでしょというアピールか?
はたまた私が気を許したところを狙って私をいい様に使おうとしているとか?
考え出すとキリがないが、兎に角あの3人の狙いが分かるまで私は絶対に絆される訳にはいかない。
あの3人の目論見を必ず暴いてやる。
「あ、オリヴィアちゃ~ん!」
早速私の元へと駆け寄ってきたエマの足を狙って私は自分の足を出す。
すっ転ばせて本心を炙り出してやる!
しかし、エマは足をかけられて、転ぶかと思いきや綺麗に一回転してスタッと着地する。
その動作には一寸の無駄もなく、思わず拍手が出そうになるほどだった。
「ふぅ、危なかったですわ。ところでオリヴィアちゃん」
スタスタと真顔でエマは私に近づいてくる。
遂に本性を出すか?
私はゴクリと生唾を飲み込んだ。
すると。
「オリヴィアちゃん、足は大丈夫?
怪我していない!?」
「は?」
私から足を出したというのに、こいつは何を言っているんだろう?
私は言われた意味が理解出来ずに頭を悩ませた。
「私のせいで可愛い可愛いオリヴィアちゃんが怪我をしてしまったら、大変ですわ!」
本当に何を言っているんだろう?
「いや、私がわざと足をかけたのよ!?
あんたを転ばせようとしたのよ!?」
「ええ、分かってますわ!
オリヴィアちゃんから私への初めてのスキンシップですわね!」
エマはそう言って顔を赤らめる。
「いやいや、相手を転ばせるなんてどこの国のスキンシップよ!?
どれだけポジティブなのあんた!」
思わず突っ込まずにはいられなかった。
「オリヴィアちゃんが私の足に自分の足を絡めてくるなんて……」
「大分都合の良い解釈をしている……!」
「ねえ、オリヴィアちゃん」
ハァハァと何やら息を荒げながら、エマはこちらを見つめてきた。
「エマお姉ちゃんと、もっと遊びましょ?」
「え、いや、遠慮しま」
途中まで否定しかけたのも束の間、私はがっつりと腕を引っ張られてエマの部屋へと強制連行された。
「大丈夫よ、きっと楽しいわ!
ふふ、うふふ♡」
「いや、なんか大分怖いんだけど」
エマは楽しそうに笑いながらそう言ってきたのだが、私はこれからこの部屋で何をされるのか分からないので取り敢えず身構える。
するとエマは部屋のクローゼットを勢いよく開けて、中を物色しだした。
それからなんとも可愛らしいドレスが次々と引き出される。
「あの、これは?」
私は恐る恐るドレスを引っ張り出しているエマに訊いてみる。
「オリヴィアちゃん、いくらスキンシップといえど、怪我しちゃったら危ないもんね?」
すると、エマはこちらには振り向かず背中越しのまま返事をしてきた。
「え?」
「オリヴィアちゃんに悪気があろうとなかろうと、私が怪我しちゃったらお父様もお義母様も悲しむと思うの」
これはまさか、私は脅迫されている!?
しかし、遂に本性を見せたという訳か。
私は内心ドヤ顔でガッツポーズしてみせた。
これでこいつらの本心を暴くことが出来る!
「ふん、それで、大人達に言いつけるつもり?
言っとくけど、私は屋敷を追い出されても別にいいのよ?」
私は強気にそう答える。
「でも、オリヴィアちゃんのお母さん悲しむと思うなぁ」
エマの言葉に、ズキンと私の良心が痛んだ。
私はどうなってもいいのだが、母に何かあったら嫌だ。
「何をするつもり?」
私がそう尋ねると、エマは可愛く、そして何とも意地悪そうな笑顔を見せる。
一体これから何をされるのか。
恐らく私はタダでは済まされないだろう。
しかし多少の傷は甘んじて受けるつもりだ。
そして虐められた証拠をとって後で盛大に暴露してやる!
「ねえ、オリヴィアちゃん?」
エマはゆっくりこちらへと振り向く。
そして。
「是非ここにあるドレスを来て、エマお姉ちゃん大好き! って言ってくれるかしら!?」
エマは満面の笑みでそうお願いしてきた。
「え? 何その条件」
私は何を言われたのか理解が出来なかった。
「だぁーって、オリヴィアちゃんちーっとも私のことお姉ちゃんって呼んでくれないし」
不貞腐れながらエマは答える。
「脅しでもしなきゃこういう可愛らしいドレスだって着てくれないでしょ?」
因みに私はこの屋敷に来てからなるべく質素なドレスを着ていた。
あんなフリフリのついた動きにくそうなドレスは好きではないからだ。
「嫌よ」
私はきっぱりお断りするも、バダンッと物凄い速さでエマに組み敷かれてしまい、身動きが取れなくなった。
「!?」
というか、この子最初に会った時から思っていたのだが運動神経が良すぎではないか!?
「うふふ〜! お姉ちゃんが優し〜く着替えさせてあげますからね♡」
エマはそう言って私の今着ているドレスを無理矢理脱がせようとしてきた。
私は必死に抵抗するも、両手ががっちりとエマの右手でホールドされており、中々解けない。
足をばたつかせても、馬乗りになっているエマにはあまり効かなかった。
もう私の羞恥心が限界だった。
「分かった! 着る! ドレス着るから!
自分で着替えさせて!」
私は瞳を潤ませて顔を真っ赤にしながら懇願する。
すると、エマはいきなりグハッと変な声を出して倒れてしまった。
「え? 何事?」
「や、やっぱりドレスはもういいですわ……」
エマはフラフラしながら顔を上げる。
「それよりももっと刺激的なものを見させていただきましたから……!」
エマは顔を真っ赤にして息もぜぇはぁと絶え絶えになっていた。
「え? 大丈夫? 具合悪いの?」
私は何となくただならぬ状態のエマを気遣う。
先程まで敵対していたとはいえ、具合が悪いのなら流石にちょっと心配になる。
「ええ、ちょっと気分が優れないかもですわ。
オリヴィアちゃん、遊びはまた今度にしましょう」
そう言うとエマはすんなり私を部屋から出してくれた。
「あのいつもしつこいエマがこうもすんなりと引くなんて、よっぽど具合が悪いんだな」
後でお見舞いに林檎でも持っていってあげよう。
私はそう考えながらエマの部屋を後にした。
その後エマはというと。
「あそこでよく耐え切りましたわ私!
理性がもう後ワンタッチで限界でしたわ!
よくやりましたわ私!
ひゃあああああ!!」
と何やらベッドの上でゴロゴロとのたうち回っていた。
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