俺の主人になって下さい!

「どうしたらあの3人は私に構わなくなるかしら?」


 私は未だにしつこく迫って来る3人をどう撃退しようか悩んでいた。


 暴言を吐いてもダメ、意地悪してみてもダメ。


 そう考えると、あの兄弟達にもう怖いものなどないのでは? と逆にこちらが怖くなってくる。


「やあ、オリヴィアちゃん。

何かお悩み事かい?

悩んでる君も美しいね?」


 そう言ってきたのは2つ年上の義理の兄のルーカスだ。


「ええ、主にあんた達の態度について悩んでるわね」


 私はそう素っ気なく答える。


「なんと、俺達の態度がオリヴィアちゃんをそんなに困らせていただなんて!」


 するとルーカスは露骨に驚いてみせた。


「そうか、オリヴィアちゃんを困らせていたのなら、俺達も少し態度を改めないとな」


 ルーカスは何やら納得したのかうんうんと頷いていた。


 私は少し驚いた。

 この3兄弟でまともな奴なんて1人もいないのかと思っていたのだが、ルーカスはまだまともなのかも。


「え? じゃあルーカスから他の兄弟にもう私と関わらないでって言ってくれる?」


 そう頼むとルーカスは「勿論だ」と快諾してくれた。


「俺から、あの2人にはオリヴィアちゃんは俺と2人きりがいいから邪魔しないでくれと伝えておこう」


「は?」


 私は咄嗟にキレそうになる。


「ん? そういうことじゃないのか?

俺はてっきり、他2人のせいで俺とゆっくり喋れないから、困っているのかと思っていたが?」


 何故かルーカスは照れながらそう訊いてきた。


「いや違う。全然違う」


 私は真顔で答える。


「私はね、1人でいたいの。

それなのに、あんた達3人が寄ってたかって来るのがうざいの」


「それは無理な話さ。

君ほど魅力的な女性、誰だって引き寄せられてしまう」


 ルーカスはそう言いながら私の顎をクイっと上げる。


 ルーカスも顔は物凄くイケメンだし、外では大分人気がある。

 世の女性ならこんなことされたらひとたまりもなくイチコロだろう。


 しかし私の様な性根の腐った女からすれば、目の保養にいいな、くらいにしか思えない。


「ごめんなさい。近寄らないでくれる?」


 私はすぐ様顎を掴んでいるルーカスの手を払い除ける。


 ルーカスは一瞬ポカンとしていた。


 恐らく世の女性を簡単に落としたプライドでもあるのだろう。

 これで私を嫌いになってくれればいいのだが。


「ここまで拒絶されるとは」


 どうやら相当心にきてるらしい。


 ここは最後にトドメでも刺しておこう。


「私、貴方みたいに顔だけの人興味ないの」


 我ながらかなり辛辣だと思う。


 これでルーカスはもう私に近付きはしないだろう。


 ルーカスは少し拳を震わせていた。


「そんな……」


 お気の毒だけど、仕方ないわよね。


 私は部屋に戻ろうと踵を返す。


 すると。


「貴方はどこまで可愛らしくてかっこいいんだ、オリヴィア様!」


 ルーカスは何やらそう叫び出した。




 ……オリヴィア様?




 私はもう一度ルーカスの元へと振り返る。


「ちょっと、何言ってるの?」


 私は心底おかしなものを見る目でルーカスを見た。


 ルーカスは何故か顔を赤らめてはあはあと息を荒くしている。


「最高ですオリヴィア様!

その強気な目がまた更にそそられます!」


「え? 本当にどうしたの? 頭でも打った?」


 ルーカスの豹変ぶりに私は思わずたじろいだ。


「オリヴィア様! どうかこの私の、主人になって下さい!」


「いや、主人とか無理でしょ、てかそっちの方が歳上でしょ?」


 私は冷静に突っ込むも、ルーカスには聞こえていない様だ。


「ここまで女性に拒絶されるとは!

逆にそこがいい! 弄ばれたい!」


「いや、本当に何言ってるの?」


 それからも1人何やら盛り上がるルーカスをよそに、私は関わらない方がいいと判断して自室にさっさと戻ることにした。

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