かっこいいですわ!

 私がベッドに腰掛けて寛いでいると、コンコンと扉のノックされる音がした。


 その後3人の声が扉越しから聞こえてきた。


「あ、あの、エマです」

「ルーカスだ」

「ノアもいますよ?」


 どうやら兄弟揃って押しかけてきたらしい。


 私はベッドから立ち上がることなく、部屋の外にいる3人に聞こえる様に大声で答える。


「何よ? 私のことは放っておいてって言ったでしょ!?」


 すると、勝手にガチャリと扉が開けられた。


 まさか許可なしで勝手に開けられるとは。


 鍵をちゃんとかけておけば良かったと、心の底から後悔した。


「いや、何で勝手に入ってきてるのよ」


 私は仕方なくベッドから立ち上がる。


 しかし、3人は先程までのニコニコとしていた表情とうってかわって、何だか険しい表情をしていた。


 それを見て私は成る程ね、とすぐに納得する。


 さっきの私の態度が気に食わなかったから邪魔者である私を排除しに来たって訳ね。


 案の定、3人の近くには大人の影もない。


 私を袋叩きにするには丁度良いだろう。


(ふん。まあいいわ。

私だって下町で喧嘩くらいしたことあるし、お嬢様やお坊っちゃま3人がかりで勝てるとでも思ってるのかしら?)


 私は3人に対してすぐ様臨戦体制に入ろうとしたその時。


 私の両手をエマがガバッと握りしめた。


(……!

しまった、この子、動きが早い!

手を先に塞がれるなんて……!)


 まあ、一発喰らうのは仕方ないかと私は目をギュッと瞑る。


 すると。


「貴女、すっごくかっこいいですわ!!」


「……え?」


 目を開くと、そこには綺麗な碧い瞳をキラキラと輝かせるエマの姿があった。


「何よ、殴りに来たんじゃないの?」


「何言ってんだよオリヴィアちゃん!」


 私が質問すると、エマの右側に立っていたルーカスに即座に否定される。


「オリヴィア姉様! さっきのお言葉本当にかっこよかったんです!

僕たち、オリヴィア姉様のお言葉に痺れました!」


 エマの左側からノアまで何やら叫んできた。


「は? 何言ってるのあんた達。

私はあんた達と仲良くする気はないって言ったのよ?」


 私はそう言ってエマの手を振り解こうとするが、しかし中々見かけによらず力が強い。


「私達、生まれた頃からずっと貴族として育てられて、周りの人達もみんな私達の事をハワード家という家柄でしか見てくれなかったわ」


 そして何やらエマが急に語り出した。


「俺達と仲良くしようとする人は、大体ハワード家か容姿くらいしか見ていない」


 続けてルーカスもそう話す。


「僕達のことをありのままに見てくれる人なんて居なかったんです」


 そう悲しそうにノアも喋る。


「でも、あなただけは違ったわ!

あなたは私達が貴族であるにも関わらず、きっぱりと仲良くしないと自分の意見を言ってくれた!」


「俺達は感動したんだ。

俺達を家や見た目じゃなく人として見てくれた事に!」


「例えそれが負の感情でも、僕達にとっては嬉しかったんです!」


「……え、えぇ?」


 私はまさかの展開についていけず、頭がズキズキと痛みだした。


「だから私達、これからオリヴィアちゃんに好かれる様に頑張りますね!」

「オリヴィアちゃんに認めて貰う様に頑張るぜ!」

「オリヴィア姉様、今度こそよろしくお願い致しますね?」


 どうしてこうなったのだろう?


 3人がそれでは! と部屋を出て行った後も、しばらく私はポカンと突っ立っていたのであった。

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