第10話 指輪
「もうちょっと稼いでもらわないと困るんだけど」
「払うものはしっかり払ってる」
「払うものね〜、こっちとしてはお店の売上げにもっと貢献して欲しい訳なんだよ」
約束は守っているのに、下卑た目つきで私を見る態度。弱い立場なので我慢。
「………」
「………」
ニヤニヤする。
「アンタさ〜ぁ、大切な指輪が有るんだって?」
咄嗟に同居人を睨む。
「しゃべったの?」
「………、私だって生活が掛かってる……」
弱々しい返事。詰め寄ろうとする。
「まあ待ちなよ。アンタが悪いよ。アンタが。皆には生活がある。アンタだけ特別扱いする訳にはいかない。まあ、事と次第によったら考えても良いけどね〜ぇ」
またニヤニヤする、虫酸が走る。
「少し考えさせて」
「いいよ、でも他の娘には手を出すなよ」
「そんな事は解っている」
指輪、優しかったダンナ様とのペアリング。
『Y&T』
今の私にとってダンナ様との繋がりを示す唯一大切な物。多分、ダンナ様は捨ててしまったかも知れない。ダンナ様を感じられる大切な最後の物。でも……、多分もうダメなのは解っている。
でも…、どんな顔で帰ればいいの?
でも…、誰に頼ればいいの?
考えがアッチとコッチに行き交う。考えたく無くなる。ただただ時間だけが進ん行く……。私はどうすればいいの…、どうしたいの…。時間だけが進ん行く、時間だけが。
私にとって最良な選択は、ダンナ様にとって迷惑な結論……、多分。
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