第6話 待ち合わせ①

11:30 金時計の前

初めて優しかったダンナ様と待ち合わせをした。同じ日、同じ時間。

来るわけは無い。解っている。でもダンナ様との思い出。


「ねぇ、ねぇ」

「……」

「キミだよ、キミ」

「……」

「無視する横顔もステキだけど、こっち向いてさ、お話しようよ。何ならドコカ行こうよ。お昼だしね」

仕方無いから顔を向けた。

「そう〜そう〜。正面もキレイだよ。少しさ見てたけど、ドタキャンされたんじゃないの?キミみたいなカワイイコドタキャンするなんて、ヒドイヤロウ何かさホットいてオレとドコカ遊びにいこうよ。ね、そうしようよ」

なんだかんだ言って肩に手が伸びる。

「イヤ」

「何で?やさしくするよ?オレ」

「イヤって言ってる。私は好きで今ここにいる。あなたとは関係ない」

強い口調、大声で言い放つ。周りが注目する。ナンパ野郎は舌打ちして消えた。

エスカレーターを上りその場を去った。ダンナ様は絶対にしない。一途が似合う人。他の男より優しく私を見ていてくれたダンナ様。そう思ったらほんのり心が温かくなった。

他の男……。ダンナ様と別れて二人の男と付き合った。

一人は日本語学校の教師。ダンナ様より若くてハンサム。私が別れたと知って猛アピール。基本的にはダンナ様と同じにした。時期が来れば考えるつもり。同棲して1週間で機嫌が悪くなった。「何処かに行こ?」「一緒にご飯食べに行こ?」って誘っても返事ないし、「一人で行けば」だし。私だって学校やバイトで忙しいのに夕御飯が作ってないと不機嫌。そのうち、言葉や態度か好戦的暴力的になった。2ヶ月ぐらいで別れた。セックスしないと日本人は不機嫌になる。そう思った。

一人は同じ日本語学校の留学生。同朋で歳は少し上。私には目的が有るから少し我慢して貰おうと考えた。留学生だから留学が終わったら、日本で就職して、一緒になって、それから、と。考えが甘かった。留学と言っても語学留学。どちらかと言えばバイトがメイン。学校行ってバイトして、家事を押し付ける。私だって学校行ってバイトする。口論が絶えない。その内、会話が無くなり、無口になり、無視される。一緒にいる意味が見出せない。出ていった。男はみんなそうなのかなと思った。

以前、

仲人に「一度ぐらいしてあげたら?夫婦仲が円満になるよ。それに、旦那さんもっと優しくなるかもね」

友達に「一度もしなかったの?キャハハ〜。それはアンタが悪い。してあげれば、もっと優しくなって、もっと言う事聴いてくると思うよ。そんなに優しくていい人ならね。病気のお父さんのこともあるでしょ?もったいないと思うよ」

多分、これが正解とその時に思った。男はみんな一緒。ダンナ様が異常じゃない。皆の意見を聴いていれば、今頃は今より幸せだった。でも違う。皆の意見を聴いていれば…。自分が変われば…。今はただただ後悔している…、後悔……。

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