第4話 俺、騎士になります

 王国騎士団長ガルフ・レドルフに連れられてきた王城で、王との謁見が行われていた。


「彼こそ、ユニークスキル【竜化】を授かった神竜ドラグニル様の御子であります。名はエドリックと」


「ほう。そのものが神竜様の御子。これは良き知らせである。大義だガルフ!」


「ははっ」


 完全に置いてけぼりである。俺、さっきまで神殿にいたはずなんだけど……


「『神龍の御子が地上に舞い降りし時、この世のすべての悪は滅びるだろう』か。まさか本当に伝承の御子が現れるとはな」


 王が感慨深そうに言う。なにそれ? 聞いたことないぞそんな話。


「かの『魔王』に対抗する人類の希望、『勇者』。エドリック、それがそなたである」


「「おお……」」


 周りの貴族たちから感嘆の息がもれる。だが、勇者? 俺はまだスキルを授かったばかりの何もできない一般人だ。

 魔王なんか倒せるわけがないし、強くなるかもわからないのに、ちょっと盲目的すぎないか?


「エドリックよ。そなたが望むのならこの王城にとどまるといい。特別待遇を用意しよう。まだスキルを得たばかりで使い方もわからないだろうが、ここで研鑽を積むこともできる」


「ありがたきお言葉です」


 ここにきて初めて発言する。


「ですが、私はこの王都を守る騎士になりたく存じます。なので、特別待遇は必要ございません。一介の騎士として研鑽に努めていければ、これ以上ない幸せでございます」


 ちゃっかり騎士になりたいと打診してみる。断られるかもしれないが、うまくいけばノータイムで騎士になれるチャンスなのだ。


「ほう!」


 王が声をあげる。


「聞いたか、みなのもの。神竜の御子でありながら、騎士として下積みをするというその気概、あっぱれである! さすがは神竜に選ばれしもの!」


 拍手が響き渡る。めちゃくちゃ居心地が悪い。そんな拍手されるようなこと言ったか?


「それではエドリックを王国騎士として任命する。いや、特別待遇は好かんのであったな。騎士任命の式まで半年ほどある、その時エドリックを正式に王国騎士とする。ガルフ、頼んだぞ」


「はっ」


 頷きあう国王と騎士団長。その表情はなんだか友達同士みたいだな。

 しかし、本当にノータイムで騎士になれてしまった。本来なら適性試験とか面接とかがあってそれを通ったら騎士になれるのだ。


「セツナになんて言おう……」


 友より一足先に騎士になる夢を叶えてしまったことに少し罪悪感を覚える。まあ、セツナなら笑って喜んでくれそうだが。

 これからのことに思いを馳せながら、俺は王城を後にした。

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