第3話 ことの重大さを知る

「この子は神竜ドラグニル様の御子だ!」


 血走った目で叫ぶ神官。俺は突然のことに何が何だかわからない。

 神竜ドラグニル。世界樹に巣食うとされる神だ。世界樹の守り手でもあり、この世の悪しきものから世界樹を守っているともされている。


「神竜ドラグニル様の御子。それはまことか」


 振り返るとそこには威圧感あふれる騎士がいた。野獣のように鋭い眼光に、筋肉で叩かれそうなほどの巨体。

 王都では知らない人はいないだろう。彼こそ王国騎士団長ガルフ・レドルフだ。


「ええ、騎士団長様。これをご覧ください」


 そういって神官は水晶を見せてくる。そこに書かれていたのは……


【竜化】Lv1 特級

 神竜ドラグニルの力を引き出し、自身の体を竜の体にする。

 Lv1 竜燐


「彼の持つスキル【竜化】は通常の分類から外れたもの、特級のユニークスキルでございます。そしてこの内容……彼を神竜ドラグニル様の御子と言わずしてなんといいましょう」


「うむ、そうだな。そなたの言う通りである。……彼は王の元にお連れする。よいな?」


「はい」


 俺の許可もなく話を勝手に進めないでほしい。俺はまだ何のことだかわかっていないぞ。


「君にはこれから王城までついてきてもらう。準備があるなら待とう」


「え、ええ? あの、拒否権は」


「悪いが、ない。君を王のもとに連れていくことができなければ私は命をもって償わなければならないだろう」


 いくらなんでも大袈裟すぎないか。だが、俺がついていかないことでこの人が困ることになるのなら、仕方ないか。


「行きます。準備はまあ、これが正装ですから」


「助かる。では行こう」


 騎士団長が神殿の外に向かって歩き出す。それについて行こうとすると、セツナと目があった。


「おい、大変なことになったな。帰ったら詳しく話を聞かせてくれよ」


「もっと大変そうな顔で言え。爽やかに言うんじゃない。……わかった。またあとでな」


 ウインクするセツナを半目で睨み返し、神殿を出て行く。


「まったく、あいつ他人事だと思いやがって……」


「突然すまなかったな。俺はガルフだ。王国騎士団長をやっている」


 騎士団長が話しかけてくる。


「もちろん知っています。僕はエドリックといいます。でも、僕はなんで王様に会わなければならないのですか?」


「神竜様の御子ともなれば、それなりの扱いにもなる。この世界の守り手である神が、このアルファルド王国に御子を使わしたんだ。どういうことかわかるだろ?」


「うわ、面倒ごとの匂いしかしない」


「安心してくれ、悪いようにはならない」


 そりゃあ神の使いを害するなどあり得ないと思うが、だからといってなにもなく終わるということは考えづらく。


「俺、ただ安定した生活が送れればそれでいいのに……」


 エドの呟きは王都を行き交う雑踏に消えていった。


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