第2話 神竜の御子
神殿の中を眩い光が満たす。これは世界樹の輝き。
体の中を暖かいものが通り抜けた。それと同時に、体の奥から何かが溢れ出す。暖かく心地よい、とても強い力が。
「お、おいエド、これって」
「ああ……スキルが手に入ったみたいだな」
強い光が収まる。が、淡い光はいまだにこの場を満たしている。
それと同時に、神官らしき人物が前に出てくる。
「これより、【神樹祭】を始める! さきほどの光により、スキルを授かったのがわかったはずだ。体の奥から力があふれる感覚がしなかったか? それがスキルだ」
周りを見ると、自分の体を不思議そうに眺める人たちが目に入る。
「では、これから何のスキルを授かったのか調べる。1人ずつこちらにきなさい」
前の方に座っていた人から順番に神官の元に行き、水晶のようなものに触れていく。
神官によって読み上げられるスキル。そのほとんどは3級か4級だが、たまに2級が読み上げられ、喜びの声をあげている。
そして、セツナの順番がやってきた。
「では、これに触れたまえ」
「はい」
いつも飄々としている彼だが、今回はさすがに緊張しているようだ。震える手をかざすと、水晶に光がともる。
「こ、これは……」
驚愕の顔を見せる神官。
「せ、【聖騎士】のスキルだ。1級の【聖騎士】が出たぞ!」
わあっと神殿中の者たちが湧き上がる。1級のスキルなどこの広い王国で一年に1人現れるかどうかの珍しいもの。ほとんどお目にかかれるものではない。
「よっしゃぁあ! やったぞ! おい、エド見たか! 【聖騎士】だってよ!」
「よかったな! 有言実行とはほんと恐れ入るよセツ」
がっと腕を組み合う。ほんとうにこの男は、イヤミなほどに完璧超人だ。だが、これでセツナは夢に一歩近づいたんだろう。騎士団長になるという夢。それが俺は心から嬉しい。
「次はお前の番だな。決めてこい、エド!」
「ははっ。まあ、セツの後だと行きづらいけどな。もし5級なんかが出たらお笑いだ」
「んなわけねえよ! エドのことだ、きっとすげえのがでるさ」
微笑むセツに、何だか照れてそそくさと神官の元に歩いていく。
「おっと、次は君の番だな。気を取り直すとしよう。……触りたまえ」
「はい」
神官の言葉に頷き、水晶に手をかざす。ぽっと光がともる。
「ふむ? これは……。こ、これは!?」
急に血走った目になり、水晶を食い入って見つめる神官。
「え、一体どうしたんですか?」
「【竜化】」
「へ?」
こぼれ落ちそうな目をこちらに向け、見つめてくる神官。
「【竜化】のスキル……分類は特級。この子は、神竜の御子だ」
神殿の中は、先ほどと打って変わって物音一つないほどに静まりかえっていた。
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