ユニークスキル【竜化】を手に入れた俺は騎士になって安定した暮らしがしたい
微糖
第1話 エドリック
世界樹。それは全ての生命の源。この世界の均衡を支える神の樹だ。
毎年春、世界樹が輝く時にこの世界の15歳の者たちはスキルを一つ授かる。その日は【神樹祭】と呼ばれ、各地の神殿に15歳になった者たちが集められる。
アルファルド王国王都にある神殿でも神樹祭が行われている。そこには王国騎士団長、宮廷魔術団長などの大物の姿があった。
「お、ついたついた。ここが神殿かあ、意外と普通なとこだなあ」
いま神殿の扉を開けて入ってきたのはエドリックという名の少年だ。長くも短くもない黒髪に中肉中背の背格好。平凡な見た目だ。
「あ、そろそろ始まるのかな?」
周りを見ると、ほとんどの人が席に座っている。まだ始まる時間ではないはずだが、そろそろ座っておいたほうがいい。
「おい、エド! こっちこっち」
声のした方を見ると、そこにいるのは幼馴染のセツナだ。短い金髪に長身イケメンというハイスペックで、爽やかさが天元突破したようなやつだ。
「セツ、悪い遅れた」
「こんな日に遅刻とかマジか? って思ったぜ。間に合ってほんとよかったわ〜」
「いやあ、昨日眠れなくてさ」
「わかるわあ。今日で俺らの将来決まるようなもんだもんな。俺なんか一睡もせずにきたぜ!」
爽やかな笑顔を浮かべるセツナ。よく見ると目元にはクマがあるが、彼のイケメンさは陰りを見せない。
「それはやべえだろ……」
「いや、結構そういう奴いるみたいだぜ? 周り見てみろよ。クマがあるやつだらけだ」
ははっと笑うセツナ。たしかに周りを見ると明らかに寝不足のやつばかりだ。むしろ俺みたいに眠れた奴の方が珍しいのか?
「1級のスキルもらえたらもう一生安泰だけどよ、逆に5級引いちまったらたーいへんだからな」
世界樹から授かるスキルは、その性能によって1級から5級までに分類されている。普通は3級か4級のスキルが多く、2級になるとかなり優秀なものばかりだ。1級ともなると毎年1人出るかどうかといったくらいの珍しさになるが、その性能はケタ違いに跳ね上がる。
逆に5級には役に立つものはないとされている。
「せめて3級の【剣術】か【槍術】あたりが出てくれれば騎士になれるんだがなあ」
「なんだなんだ、夢がないなあエドは。俺が目指すは1級の【聖騎士】! それ以外はない」
拳を突き上げていうセツナ。その顔はいつもより真剣で、強い意志を感じられた。
「俺なんかとは違うよな。セツナは。俺はただ安定した生活をしたいから騎士になりたいだけだし」
「エドらしいな。まあ、無事2人とも騎士になれたらいいな」
「ああ」
2人で笑い合う。気のいいやつなのだ、セツナは。
これから何事もなく全て平和にうまくいくといいな。そんなことを考えていると、神殿に目が眩むほどの光が溢れ出した。
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