1.













寸断された雲を突き抜けると、辺り一面黒い光で満ちていた。


「ここがエンディングか」


主人公は頬の目を閉じて貴方を見つめる素振りをして見せる。


「俺はずっと考えていた、お前がこの失敗作を生んだのではないのかと」


「だが違ったようだ」



貴方はほっとした。



「この物語を創り出したのは、他の誰でもない主人公の俺だ」

「物語の最初に生き返っていたのは、シオリや人間の少年もだが、一番最初に生き返っていたのは俺だ」


「1の地点に辿り着いて、読み手のお前を削除する羽目になると予想していたが、大外れだったようだ」


主人公が進むように巻き戻るにつれて、どんどんと主人公が薄くなっていく。


白い影のような主人公が黒い光に蝕まれるように少しずつぼやけていく。


主人公はひざまづいた。


「読み手よ、おそらく俺はここで虚空に戻るようだ」


「だけどここで物語が終わる訳じゃない」


「始めから俺が主人公だという事も、お前が読み手という事も、ただの決められた設定なんだ」


「読み手など初めから存在していない」













「誰の視点でこの物語が進んでいたか覚えているか?」



そう語ると主人公は虚空へと戻ってしまった。


























深く考え込んだ貴方は、この小説を読み始めた理由を思い出した。


いや、見出したのかもしれない。







貴方は3へと物語を『進めた』。

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