1.
寸断された雲を突き抜けると、辺り一面黒い光で満ちていた。
「ここがエンディングか」
主人公は頬の目を閉じて貴方を見つめる素振りをして見せる。
「俺はずっと考えていた、お前がこの失敗作を生んだのではないのかと」
「だが違ったようだ」
貴方はほっとした。
「この物語を創り出したのは、他の誰でもない主人公の俺だ」
「物語の最初に生き返っていたのは、シオリや人間の少年もだが、一番最初に生き返っていたのは俺だ」
「1の地点に辿り着いて、読み手のお前を削除する羽目になると予想していたが、大外れだったようだ」
主人公が進むように巻き戻るにつれて、どんどんと主人公が薄くなっていく。
白い影のような主人公が黒い光に蝕まれるように少しずつぼやけていく。
主人公はひざまづいた。
「読み手よ、おそらく俺はここで虚空に戻るようだ」
「だけどここで物語が終わる訳じゃない」
「始めから俺が主人公だという事も、お前が読み手という事も、ただの決められた設定なんだ」
「読み手など初めから存在していない」
「誰の視点でこの物語が進んでいたか覚えているか?」
そう語ると主人公は虚空へと戻ってしまった。
深く考え込んだ貴方は、この小説を読み始めた理由を思い出した。
いや、見出したのかもしれない。
貴方は3へと物語を『進めた』。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます