2.














虚無の外へと弾き出された主人公の頬の目に映るのは、文字、文字、ひたすらに文字。


空には綺麗に色づけられた絵が3枚ほど横一列に並んでおり、どれも人間がモチーフになっているようだった。


「これが失敗作を生んだ世界の神達なのか?」


黒い文字、桃色の文字、緑の文字、綺麗な青い文字。


みたことも無い言葉で綴られた文字の末尾は!や⁉などで多く飾られている。



「お前は必要ない。主人公、今日限りでパーティから抜けてくれ」



不格好な中世風の甲冑を纏い、あごに髭を蓄えた青年が主人公に話しかける。


「誰だ、お前は」


色のついた世界の中、主人公だけが、この世界には無い色の無地の白で染まりきっていた。


「今までは昔馴染みの身分でこのパーティにいれてやっていたが、お前の実力ではこれから先の階層では────


「一体、俺はどこへ着いたんだ?」


「非常に残念ですけど雑魚を連れていける程、私達に余裕はないのよ」

「ちょっと聞いてるの⁉」


ヒステリックな女性の声が耳をつんざく。


「なあ、俺は一体どこからきた誰なんだ?」


周りの男性と女性は固まってしまったようだ。


2人の事は気にも留めずに色鮮やかな青空を見ると、一部の雲が途中で寸断されている事に気づく。


主人公もそれをみつけたようで、よく目を凝らすと無色の澄んだ穴が空いていた。




「お前は必要ない。主人公、今日限りでパーティから抜けてくれ」



不格好な中世風の甲冑を纏い、あごに髭を蓄えた青年が、革のベストを着た気の弱そうな少年に話しかける。


その態度は主人公より高圧的だ。


「あ、えっと……でも」


「今までは昔馴染みの身分でこのパーティにいれてやっていたが、お前の実力ではこれから先の階層では命の危険が伴う、それにもう代わりの人材もいるんだ」


「そ、そんな……急に、でも、僕が居なかったらここまで戦えてないですよね?」




「非常に残念ですけど雑魚を連れていける程、私達に余裕はないのよ」


気の弱そうな少年は眉を細めて肩を落とす。


「足手まといは出て行って!……まったく、どうして自分から出ていけないのかしら」


主人公は気の弱そうな少年の手を取った。


「言葉通りなら出て行くのはこいつらの方だが、あいにく俺はこの物語の主人公ではない、今は俺をあの場所へ連れ戻してくれ、お前なら簡単に出来るだろう」


主人公は寸断された雲を指さした。


「ぼ、僕もいつかその場所にいってもいいですか?」


「構わない」


「ちょっと聞いてるの⁉」


気の弱そうな彼は主人公の腕を両手でしっかりと握ると、腰を落として大きな円を描くように主人公をぶんまわして雲に向かって放り投げた。


「僕もいつか!あなたみたいに!」

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