第94話 休養日

 依頼ボードにめぼしい依頼がなかった二人は、冒険者ギルドを出て飲み屋に向かおうとしたのだが、


「まだ時間が早いな。ユウ、どこか行きたい所はあるか?」


 そうラキに言われたユウは少し考えた後、


「そうだな...領都では寄れなかったから、本屋に行ってみたいかも」


「あぁ、王都じゃったら本の数も種類も豊富じゃな」


「それは楽しみだ」


 早速二人は本屋に向かった。



◇◇◇



「おっ!? これいいな!」


 ユウが目を見張ったのは、カラフルな絵が表紙になっている大判の本だった。


「魔物図鑑じゃな。魔物辞典に絵が付いたようなもんじゃ」


「これは買いだな!」


 ユウの目が子供のように輝いていた。ラキは苦笑しながら、


「そんな大きな本を抱えて飲み屋に行くつもりか?」


「うっ! た、確かに...飲み屋は今度にしよう...その代わり本を大人買いする!」


「分かった分かった...」


 ラキはお手上げとばかりに手を振った。



◇◇◇



 その日、暗くなってすぐにラキとユウは戻って来た。


「今戻ったぞ」


「あら? 早かったですね? 飲んで来なかったんですか?」


「あぁ、ちょっと予定が変わってな」


 そう言ったラキの後ろから、


「ぐぎぎぎっ....」


 顔を汗まみれにしながら、大量の本を抱えたユウがやって来たのを見て、


「あぁ、なるほど...」


 アリィは色々と察した。


「リオはどうした?」


「リビングで死んでます」


「そうか...」


 アリィとラキが揃って苦笑した。リビングに行くと、


「うぅ...体中が痛い...」


 全身筋肉痛で湿布まみれになったリオがソファーの上で横たわっていた。


「リオ、大丈夫か?」


「大丈夫ばない...」


 リオは顔も上げずに答える。


「明日は休養日にするか。めぼしい依頼もなかったしの」


「そうなんですね。まぁ、リオちゃんがこんな状態なんでちょうどいいかも知れませんね」


「明日は休めるの?」


「あぁ、ゆっくり休め」


「やったぁ!...イテテテッ...」


 喜んだリオが起き上がろうとするが、痛みに悶絶してまた寝転ぶ。


「無理して動こうとするな。ところでアリィよ、このリオに貼った紙はなんと言ったかの?」


「これは湿布って言います。筋肉痛に良く効くんですよ」


「そうか...なんと言ったらいいのか...独特の匂いじゃな...」


「リオこの匂い嫌い~! 鼻がもげそう~!」


 リオが鼻を摘む。確かに慣れないと不快に感じる匂いなのかも知れない。


「リオちゃん、我慢です。早く治したいでしょ?」


「うぅ...」


 リオは唸るしかなかった。


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