第92話 躾る2
ちょうど場所が荒れ地ということもあり、ここでリオのダイエットをすることにした。
夜になってフェンリルの姿になったリオの絶叫が辺りに木霊する。
『ヽ(ヽ゜ロ゜)ヒイィィィ!』
燃費の悪いこの姿になった方が、効果的なダイエットになるんじゃないかと思ったからだ。
「ほれほれ、早く逃げんと死ぬぞ?」
そのリオの後ろから、ドラゴンになったラキが軽くブレスを吐きながら追い掛けるという、何ともシュールな構図が出来上がった。
『鬼~! 悪魔~! 人でなし~!』
「そらまぁドラゴンじゃし」
悲鳴を上げながら必死に逃げ惑うリオを、
「頑張れ~」「リオちゃん、ファイト~」
なんとも気の抜けた様子で応援しているユウとアリィの姿があった。
「しかし、なんでまたリオだけ太ったのかな?」
「食べさせ過ぎたのかも知れませんね。ほら、ペットを可愛がるあまり食べ物を与え過ぎて、デブ犬やデブ猫になっちゃったケースって良くあったじゃないですか?」
「あぁ確かに。良くTVで見てたっけ。見てる分には笑えたけど、実際はペットの犬猫にとっちゃ動物虐待に当たるんだよな?」
「そうですね。飼い主がペットの健康管理を疎かにした結果です」
「今後はそうならないよう、心を鬼にして厳しく躾ることにしよう」
「えぇ、それがリオちゃんのためですもんね」
そんな会話がなされているとは知らないリオは、
『ヽ(ヽ゜ロ゜)ヒイィィィ! お、お助け~!』
「ほれほれほれ~」
とにかく必死で逃げ回っていた。
◇◇◇
『も、もうダメ~...お、お腹空いた...』
燃費の悪いリオフェンリルがダウンした。変化が解け獣人の姿に戻る。すかさずアリィがバスタオルで包む。ユウは目を背けていた。
「た、食べ物を...」
「はいこれ」
アリィがバナナを渡す。
「えっ!? これだけ!?」
「はい、手っ取り早い栄養補給には最適なんですよ? 糖分も補給できますし、消化も良いですし」
「うぅ...肉食いたい...」
「我慢しろ。そんなもん今食ったら確実に吐くぞ? まだ1セット目なんだから」
「えぇ~!? まだやるの~!?」
「当然だ。3セットを予定している」
「そ、そんなぁ...」
リオの目からハイライトが消えた。
その後、リオのダイエットは一週間続き、かなりスリムになったが完全にグロッキー状態になってしまったので、いったん休ませることにした。
◇◇◇
その日、ユウとラキは二人で冒険者ギルドを訪れていた。グロッキー状態になったリオをアリィに任せて、キマイラの魔石の換金と新しい依頼を受けるためである。
ちなみにこの後、二人して久し振りに飲みに行く予定なので、ラキは大人モードになっている。
ギルドの中に入るといきなり野郎どもに囲まれた。
「あ、兄貴! こいつらですぜ!」
見覚えがある。確かラキが以前「躾た」野郎どもだった。
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