第91話 ダイエット

 結局は一番動きの早いリオがキマイラの足を止め、


「ウリャアッ!」


 次に動きの早いラキが深手を負わせ、


「フンッ!」


 最後にユウがトドメを刺した。


「セイヤァッ!」


 崩れ落ちるキマイラを前に三人とも「ハァハァ...」と荒い息を吐いていた。


「どれ、魔石を回収するか...」


「そうだな...」


 ラキとユウが緩慢に立ち上がりキマイラの亡骸に向かう。魔石を回収して戻ると、


「あ、アリィ! そ、そんなに落ち込まないで! ね?」


 orzの格好になって落ち込んでいるアリィを、リオが一生懸命慰めている場面に遭遇した。


「やっぱり私は要らない子なんだ...」


「そ、そんなこと無いったら! あ、そうだ! リオ、戦ったらお腹空いちゃったよ! 何か食べ物出して欲しいな~!」


 そんな訳ないだろう。朝食を取ってからまだ一時間も経ってないんだから。そう思ったラキとユウの二人だったが、ここは空気を読んで黙っていた。


「うぅ...リオちゃんは本当に優しいですね...はい、ドンドン出しますからジャンジャン食べて下さいね?」


 次々に積み重ねられていく食べ物の山を前にリオは、


「う、うわぁ...う、嬉しいなぁ...」


 乾いた笑みを浮かべながら「助けて...」とばかりにラキとユウを見やるが、二人は両手で×を作って無言で首を振った。それを見たリオの笑顔が引き攣った。



◇◇◇



「うぅ...も、もう食えましぇん.. 」


 なんとか完食したリオが、行儀悪く寝そべりながらポッコリしたお腹を擦っている。その様を呆れながら見ていたラキとユウは、やがて気になったことがあったのか、二人ともリオの側にやって来た。


 そしてそれぞれが頬っぺたや二の腕、太股や下っ腹などをプニプニし始めた。


「な、なにかな!? ふ、二人とも!?」


 不安になったリオの声が震える。確認し終えた二人は「やっぱりな」という顔で頷き合ってから、


「リオ、お前(お主)太ったな」


「ぎ、ギクゥッ! ななななんのことだか! りりりリオ、わわわ分かんないなぁ!」


 リオの顔面から尋常じゃない量の汗が流れる。


「惚けても無駄だ」「ネタは上がっとる」


「ききき気のせいだよ! ややややだなぁ!」


「あくまでもシラを切るか」「往生際が悪いぞ」


 二人の追及は止まらない。


「そそそそうだ! ききききっと成長期なんだよ! うんうん! 間違いないよ! そうに決まってるって!」


 リオが悪あがきする。


「「 横に広がる成長期があって堪るかぁ! 」」


 ついに二人が切れた。


「あうぅ...」


 二人はリオの両脇をガッチリ固め、ニッコリと笑顔を浮かべながらこう言った。


「「 リオ、ダイエットしようか? 」」


「ヽ(ヽ゜ロ゜)ヒイィィィ!」


 リオの絶叫が響き渡った。

 

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