第90話 荒れ地での戦い2
ユウは味方の周囲に張っていたバリヤを、個人個人向けに切り替えた。
「良し、これでいいぞ。どんなに動き回ってもバリヤは付いて回るから安心しろ」
ユウの説明にラキは納得する。
「なるほど。そう言えばお主は全体だけでなく、個別にバリヤを張ることも出来るんじゃったな」
「あぁ、そういうことだ。これで服を脱がなくていいだろ?」
「確かにな。どれ、じゃあちょっくら行って来るかの」
そう言ってラキはキマイラが吐き出した火炎の中に飛び込んで行った。
「ねぇねぇ! リオも行っていい?」
リオもウズウズしているようだ。
「あぁ、いいぞ。でも気を付けてな?」
「分かった!」
リオが元気一杯に飛び出して行った。
「アリィはどうする?」
ユウは最後に残ったアリィにそう尋ねる。
「わ、私はまだちょっと怖いのと、得物が弓矢なんで近付く必要はないかなと...」
「それもそうだな。じゃあ、アリィはここから俺達を援護するってことで」
「わ、分かりました」
ユウはそう言ってキマイラとの接近戦に向かった。
◇◇◇
キマイラは逃げ回っていた。
「この! デカい図体のクセにチョコマカと動きおってからに!」
「あ、当たらない~!」
近付いたはいいが、攻撃を当てられず二人とも苦労しているようだ。ユウはラキが言っていた臆病者の意味が分かった気がした。
オマケに二人の得物はラキが自前の爪、リオがサバイバルナイフと、どちらも射程が短いので余計に苦労しているようだ。
「ラキ! リオ! こっちに追い込んでくれ!」
「「 了解! 」」
ユウの意図を察した二人は、ユウが待ち構えている方向へとキマイラを誘導し始めた。ユウはユグドラシルの枝を構えて待つ。やがて二人に追い立てられるように、キマイラが近付いて来た。
「ウオリャアァァァッ!」
ユウが気合いを込めてユグドラシルの枝を振り下ろす。
「ガアァァァッ!」
キマイラはジャンプして躱そうとするが、尻尾の蛇までは躱し切れずに切り落とされてバランスを崩した。
「今だ! アリィ!」
「は、はいっ!」
トドメを刺すべくアリィがクロスボウを構え矢を射った。
ポスッ...カランカラン...
矢はアリィを囲っているバリヤの内側に当たって空しく下に落ちた。
「「「「 あっ... 」」」」
全員の目が点になる。
「えっ!? なんでなんで!?」
アリィは訳が分からず混乱していた。
「そうか...このバリヤは異物を何でも弾くから、矢が放たれた瞬間から異物と判断されて弾かれたんだな」
うんうんと一人頷くユウに、
「感心しとる場合か!」
体勢を立て直して再び逃げ回るキマイラを、再び追い掛け回すラキが怒鳴った。
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