第4話 これがチートか
ユウとアリィは改めて自分達の置かれた状況を確認し合った。
「ここが異世界だとして、だとすればこれは所謂チートってヤツなのかな?」
ユウは自分の目の前にある透明な膜を指差した。
「えぇ、そうだと思います。私の周りにまで張られてますし。それに後ろの方にも」
アリィが周りを見渡しながら応える。
「ここに移動してくる時も一緒についてきた。俺達を守ってくれるバリヤみたいなもんなのかな?」
「えぇ、猪の件を見ても明らかだと思います」
「けど、これどうやって解除するんだ? 守ってくれるのはいいけど、これじゃなんにも触れないよな?」
「う~ん...何か条件があると思うんですけど...そもそも、このバリヤが張られた時って何を思ってました?」
「そりゃ猪から君を守りたいって一心だったよ」
「そ、そうですか...」
アリィの顔が途端に赤くなった。
「では逆に『もう守る必要は無い』って思ったてみたらどうでしょうか?」
「なるほど、やってみよう」
ユウが目を閉じて念じてみると、
「おっ! 解除された。凄いな、アリィ!」
「い、いえ、それ程でも...じゃあ今度はまた『守りたい』と思ってみて下さい」
「あぁ、やってみよう」
するとまたバリヤが広がった。
「なるほど、コツが分かってきた。要は心の持ちようってことか」
「良かったです...」
喜色を浮かべるユウに対してアリィの表情はなんだか冴えない。
「アリィ? どうかしたか?」
「あ、いえ、私にはチートが無いのかなって思って...」
「あ~...そうだよな、なんかゴメン、自分ばっかりハシャイじゃって...」
「いえ、かえってすいません。そんなつもりじゃなかったんですが、私にもチートがあるなら早く知りたいなと思っただけで」
その時、アリィのお腹が小さく鳴った。恥ずかしくて真っ赤になるアリィ。
「そういや俺も腹減ったな。この世界にどんな食い物があるか知らんけど、探検してみるか? アリィのチートがなんなのか気にはなるけど、まずは腹ごしらえだ」
「は、はい...そうしましょう...」
ユウとアリィは食べ物を求めて異世界探検を開始した。
◇◇◇
三時間後、疲れ切った二人は洞窟の岩の上でグッタリしていた。山の中を探索してみたが、食べられそうな木の実も野草も何一つ見付からなかった。最も、野草に関しては異世界の知識が無い為、迂闊に口にするのは危険と判断したのだが。せめて川でも見付かれば喉を潤せたのだが、見付からなかった。
「参ったな...」
「もう動けません...」
あぁ、こんなことなら賄いを断るんじゃなかった...アリィはここに飛ばされる直前までバイトしていたマッグのメニューを思い出していた。チーズバーガーとポテト大盛、ドリンクはLサイズで...
そんな妄想をしていたら、匂いまで漂ってくる幻覚を自覚した。本格的にヤバいなと思ったアリィの目の前に、ハンバーガーセットが現れていた。
「へっ?」
アリィの口から間の抜けた声が漏れた。
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