第3話 どうやら異世界らしい
有栖佑樹は呆然と目の前の透明な膜を眺めた。
恐る恐る触ってみる。するとフニャッと柔らかい感触が返って来た。猪がぶつかって倒れてるくらいだから硬いのかと思ったので、少し拍子抜けした。
「なんだかバリヤみたいですよね? 私達を守ってくれたみたい」
後ろから女の子の声がする。確かにそう見える。
「良く分からんけど、そうみたいだな。それはそうとして、猪が伸びている間に移動しないか?」
「はい、そうしましょう」
二人はその場を離れ、少し歩いた。すると前方に大きな口を開けた洞窟が見えて来た。
「洞窟があるな。入ってみようか ?」
「大丈夫でしょうか?」
女の子が不安気に尋ねる。
「大丈夫じゃないかな? ほら、奥の方が明るい。日の光が差してるみたいだ」
「本当だ...」
洞窟はそれ程深くなかった。最奥に達する。結構広い空間になってる。どうやら天井から光が漏れているようだ。
「フウッ、ここらで一休みしようか」
有栖佑樹は手近の岩の上に腰を下ろした。
「そうですね」
女の子もそれに倣う。
「取り敢えず、自己紹介しないか?」
「えぇ、良いですよ」
「じゃあまず俺からだ。名前は
すると女の子が目を剥いた。そんなに驚くことだろうか? と訝しんだら、
「あの私...
そういうことじゃなかったようだ。
「...マジで?...」
「...マジです...」
こんな偶然ってあるのだろうか? たまたま出会って、異世界だかなんだか知らんが、こんな訳の分からん場所に飛ばされた二人の名前が、逆から読んだら各々の名前になるなんて...
「そっか...しかし呼び方に困るな...俺が『ありすちゃん』って呼んだら、自分の名字をちゃん付けしてるイタイ奴になっちゃうし『ゆうきさん』だと自分の名前をさん付けになっちゃうし...」
「えぇ、それは私も全く同じです...」
二人して頭を抱える。
「それじゃこうしないか? お互いの名前を愛称で呼び合う。『ありす』だから、アリィとかどうかな?」
「それいいですね! それじゃ『ゆうき』さんだから、ユウさんでどうでしょうか?」
「呼び捨てで構わないよ?」
「えっ? でも歳上の方を呼び捨てにするのは...」
「君の言葉を借りればここは異世界なんだから、そういうの気にしなくていいんじゃないか?」
「そうですね...ではユウ、よろしくお願いします」
「こちらこそよろしく、アリィ」
こうしてオッサンと女子高生の奇妙な異世界生活が幕を開けた。
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