第9話

突然プロポーズされた僕は、本来の目的を忘れていたが、こんな小っ恥ずかしい事を堂々と言える有未さんなら、まだ克服する可能性があると確信した。


「その意気だ有未さん!私を雇って下さい!!というヤル気を見せ付けるんだ!!」


変なテンションに駆られた僕は、最もらしいアドバイスを有美さんに伝えた。彼女の反応はイマイチだったが、意図は伝わっただろう…恐らく。


この日を境に、彼女の言動は少しづつ変化した。


「得意な科目はなんですか?」

「はい!得意科目は家庭科で料理が得意です!!」

「それは素敵ですね!普段から料理をされるんですか?」

「はい!お弁当を持参するほど料理は毎日しています!!」


いいぞ!かなり好印象を与えるアピールポイントだ!!今までの質疑応答がダメだった分、目覚ましい成長ぶりだ!!


「有未さん!次の面接は決まった!?」

「うん!2週間後に1社受けるよ!!」


この調子で2週間も練習すれば、前回受けた2社の面接時よりも確実に合格する確率は上がるだろう。更に可能性を上げる為に、事前にその会社の特徴を掴んで対策を練る。今回はいけそうだ!!


「ちなみに何処の会社を受けるの?」

「ん?foodsって会社だよ☆」


foodsか…確か小さい会社ながらにコスパの良い食品を小売りする会社だな…料理や食品に関する知識を養って、会社の色にあったアプローチをかければイケるな!!


「よし!食品や料理に特化した会話の特訓をしよう!!」

「アイアイサー☆」


こうして、僕と有未さんの過酷な食レポ…いや料理研究家のような鍛錬の日々が続き、僕たちは謎に食品、料理の知識を得た。


そして…入社面接の日。

僕は付き添いで、近くの公園で待っている事にした。


「有未さん!今回は勝てる試合だ!!自信と元気を持って戦ってくれたまえ!!」

「わかりましたボス!行ってきます☆」


練習の成果か、顔付きも良く緊張はあまりしていない様子だ。何故か僕の方が緊張していた…トイレ行きたい。

そんな寒空の中、もう11月だという事さえ忘れていた僕は、何故か高校を卒業する事について考えていた。学生という身分では無くなり、社会人になる事への不安、これから先の楽しいであろうという未来を想像した。

確定ではない未来は、ただの不安に思えるのかもしれないけれど、それでも前を向いて歩きたいと心に決めた。


と、考え事をしていたら1時間も経っているではないか!?有未さんは大丈夫だったのだろうか…


「優希君!面接終わりました☆」

「お疲れ様でした!!どうだった!?」

「うん☆前と違って沢山お話しをしたよ!」


沢山お話しをした…という事は会話が長く続くアプローチが出来ていたと解釈した。


「さっき面接官の人から3日以内に合否の連絡を入れるって言われたよ☆」


手応えあり…確信した。僕は有未さんにボソッとこう伝えた…


「有未さん…おめでとう…勝ち確です」

「カチカチ…?」


そして、待ちに待った合否の結果が届いた…


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