第7話

有未さんの明るい性格の裏には、誰もが想像も出来ない悩み。


「人と喋る事が苦手」


そんな有未さんの助けになりたいと考えた僕は、「人間サンドバック」になる事を決意した。誰しも初めから物事が上手くいく人はいない。つまり、日々習慣化して「慣れてしまう」事が最も効果的だと僕は考えた。


有未さんから相談をされた次の日から僕は積極的に話し相手になった。


「有未さんの特技はなんですか?」

「リコーダーです!!」


特技がリコーダーのJKを見たことがあるだろうか…


「ほっ…他に特技はありますか?」

「カスタネットです!!!」


何故に楽器がメインなのかは分からないが、何よりマニアックな回答に唖然とした。


「有未さん…ピアノとかギターとかは?」

「やったことありません!!」


ドヤ顔で僕に答える有未さん…

なるほど…これは重症だと僕は確信した。

立て続けに僕は質問を乱打する!!


「有未さんの得意な教科は何ですか!?」

「ありません!!」

「有未さんの苦手な教科は何ですか!?」

「全部です!!」


おいおいおい…マジかこの人…

絶望的な回答に徐々に言葉失った。

恐らく、今までの面接もアピールポイントが極端に少ない為、意欲的に感じられなかったのだろう…

意を決して僕は有未さんに告げる。


「有未さん…嘘も方便って言葉知ってる?」

「…良い嘘的な事でしょ?」


何となくは理解しているようだ。

辛うじて理解力はあるのだが、この性格だと嘘を付く事に抵抗があると僕は悟った。

普通の質問では彼女の心に響かないと思った僕は質問の形式を変えてみる。


「有未さんがもし面接官ならどんな人を合格させたいと思う?」

「真面目で…意欲的な感じ?」

「そうだよね!質問の答えが不真面目に感じたらちょっと嫌だもんね!!」


有未さんの気持ちに寄り添った誘導尋問をしていく…


「有未さんが今までの高校生活で1番頑張った事は何?」

「う〜ん…無遅刻無欠席とかかなぁ?」


あるじゃないか…アピールポイント!!?


「有未さん…勝てるぞ!この試合!!」


何故か僕の方がテンションが上がっていた。

今まで絶望的だった会話から、一筋の光が差している事がわかったのだ。


そして僕は、有未さんに最も効果の高い提案をする…


「明日から毎日ノートに有未さんの良い所を僕が書いて渡します!!」


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