第5話
それから数日後、2社目の面接が終了した。
初めての面接とは違い、あたふたしていた僕も落ち着いて対応出来るようになったと実感している。
人間、反復していけば不得意も得意に変わるものだと、努力の意味を少し理解する事が出来た!
と…ここまではとても良いお話に聞こえるが、またしても事件が起こる…
入社面接をした数日後に有未さんから連絡が…
「優希君は最初の面接の合否きた?」
あまり隠すのも性に合わないので、このタイミングで有未さんに正直に答えた。
「ギリギリ合格してたらしい!マグレだって母親が言ってたよ…」
余裕で合格した素振りではなく、あえて難しかったと伝えてみた。事実、余裕かどうかはわからないので、最低限の優しい嘘である。
有未さんからどんな返事が来るか不安ではあったが、少しは有未さんの気持ちを緩和出来ていると僕は認識している。
そして有未さんからの返事はこうだ…
「2社目も落ちましたーー!!死にます☆」
何で有未さんそんなに合否が早いの!!?
死ぬ!?待て待て待て!!?早まるな!!
慌てた僕は、初めて有未さんに電話を掛ける。数秒もしない間に電話は繋がった。
「もしもし!?死ぬな!まだだ!!まだチャンスならいくらでもある!!」
有未さんが話をする前から、僕は必死に言葉を投げかけた。一瞬だけ間があいた後に冷静な声で有未さんは…
「あの…死んでませんけど?」
「優希君大丈夫?そんなに思い詰めないで」
我に返った僕は、キョトンとした顔でスマホから聞こえる有未さんの声に耳を傾ける。
「初めて電話したんだからゆっくりお話ししよう☆」
思い返せば有未さんの声を聞いたのは、初めて電車で出会った日以来だ。
僕は電話なんてして良いものか分からず、連絡はいつもメールだけだった。
「優希君の声を聞くのが久しぶり過ぎる☆」
「有未さんの声も久しぶりだね」
何気ない会話に心地良さを感じた僕は自然と言葉が出てくる。
「会社なんて星の数程あるんだから、何回でもチャレンジしようよ!」
今までの罪悪感がフッと消えた僕は、有未さんと2時間も通話を楽しんでいた。
そして会話の流れから…明日、有未さんと会う約束をしたのである。
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