エピソード2 パンチラーン帝国の興り
後に暗黒ニーソ時代と呼ばれた、絶対領域制末期の1919年。
国民感情は、絶対領域による鬱屈の渦中にあった。
決して見える事のない、性事とパンティに対し、異を唱える者が現れ出したのである。
無論、そういった者らは、直ちに粛清対象となり、絶対領域制に不満を持つ国民への見せしめともなった。
これまでは、この粛清で対応出来た。
だが、この年は違った。
異を唱える者が多数に及んだのである。
「パンティは不可侵の存在に非ず」
人々は口々にそう唱え、やがて下着解放組織(レジスタンス)を結成するまでに、それほどの時間はかからなかった。
これに対し、国軍もチン圧に乗り出した。が、長年続いた粛清活動により、国民はおろか軍兵士にですら、不満と性欲はもはや限界であった。
ズボンの膨らみも限界であった。
1922年。
この頃になると、下着解放組織の数は大小合わせて20程度までに増え、国は混迷へと突入する。
その中でもとりわけ過激な手淫組織だった『カイデ・ペロリ・パンティ』は、他の組織との連携を計り、国に対し、全面的なクーデターを起こした。
後の『コルセット事変』である。
レジスタンスの中心で、手淫組織だった『カイデ・ペロリ・パンティ』には、後のパンチラーン帝国における首脳部メンバーがおり、その中には初代皇帝マングリアス1世となる当時の活動家・サワルダケ=イッキソーの姿もあった。
コルセット事変は、これまでの抑圧された性欲が一気に爆発したかのようなクーデターであった。
レジスタンスのみであれば、国軍に数の上では到底及ぶべくもない。
が、これに国民の大半が加わればその限りではなかった。
それ故に、国軍が追い詰められるのに二ヶ月と時間を要さなかったことは、もはや自明の理であった。
翌1923年、プラトニック朝ブラホックの転覆劇は、いよいよもって大詰めを迎えることとなった。
それはあまりにも悲劇的な形で。
窮地となった国軍が、レジスタンスを一掃すべく、暴挙ともいうべき策をしいた。
パンティ焼却による大弾圧である。
これは『カイデ・ペロリ・パンティ』率いるレジスタンスの大義を失わせる大事件であった。
圧倒的優勢であったレジスタンス側は、この出来事により大義名分を失い、その規模は大幅な縮小をせざるを得なかった。
正義と性義を掲げる理由が失われてしまったのだから、悲劇といえよう。
勢いを取り戻した国軍は、再び粛清に乗り出したが、もはや逆らう者は少なかった。
だが、その一方で諦めない者も居た。
『カイデ・ペロリ・パンティ』のサワルダケ=イッキソーである。
彼は、仲間であり親友でもあったモンデサワロ=キトー、ナメシャブロ=スグデルと共に、劣勢っとなってしまったレジスタンス側を支えたのである。
しかし、レジスタンスの劣勢は以前変わることは無く、ただただ、国軍の粛清を耐えるしかなかった。
もはや勝敗は決した。
誰も彼もがそう思った。
そんな中、このコルセット事変は、意外な結末を迎える事となる。
国王・チチゲーノ=ビンビン=ブラホックが隠匿していたビニ本が明るみに出たのである。
──国王自らが性の戯れ。
禁欲を強く重んじる絶対領域制において、これは国としての存亡を決定的なものにした出来事であった。
告発したのは国王の重臣であったプルティンポ=ブランブランを始めとした、69名の家臣達だった。
皮肉にも、先のパンティ焼却により、国軍内で国王に対する不信が広がり、内部崩壊の引き金となってしまったのである。
1923年12月。
重罪を免れなかったチチゲーノは、自室での絞首オナニーに耽りながら自害。
国王72年の生と、398年に渡って繁栄したプラトニック朝ブラホックが、この時を以って幕を閉じたのである。
その後レジスタンス一派も解体の運びとなり、サワルダケが中心となり、政治体制と股間を仮ながらも立て、国政を混迷に落とさぬよう働きかけ、ぶっかけた。
国王の死よりおよそ半年が勃った1924年5月。
しばらく仮体制の政治であったが、本体制へと移行すべく、サワルダケは新国号を発表。
また「全てのパンティに光あれ」という信念のもと『チラリズム憲章』を発布。
更には自らをサワルダケ=イッキソーから初代皇帝マングリアス1世と呼称した。
パンチラーン帝国の誕生である。
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