卑猥妄想史 大全

抜山 忍悟郎

エピソード1 フルボッキ条約


 時に射精暦1072年。

長く続いたマスカーク王朝の衰退を期に、掻く命家達による一大性事妄想が巻き起こった。


時代は、王制から民主制へと移ろい行く。



 掻く命家達は、それぞれのヘルス、それぞれのソープで、各々の主義主張を争った。

とりわけ、中でも精力の大きかった派閥(と金玉)が二つあり、主だった争いは、この二派によるものだった。


一方は、裏筋からなぞる事で性的興奮を増大させる「摩擦論」を主義としたオナ=ホルス=マラビン率いる陰嚢派。


そしてもう一方は、マスカーク王朝の最後の皇帝・ビュルットデル=マスカーク72世の忘れ形見であった、コスルトデル=マスカーク率いる、包茎派である。


この二つの派閥による性事妄想は、苛烈を極め、数多の精子が死に絶え、幾多の白濁汁が流れた。



 やがて擦り過ぎて疲弊しきった二派。もはや中折れ共倒れは必至と思われた。そんな矢先、ある人物が一つの提案をする。


東洋の恥質学者・シコル=イチモツ(中出派)である。


シコル=イチモツは、二派に和平を前提とした、条約をぶっかける。それは後に「フルボッキ条約」と呼ばれるものの、きっかけともなる出来事であった。



 フルボッキ条約とは、性感帯の位置を共通のモノとし、ペニスの柔軟な運用および性癖の共存を定めたモノで、これにより、長らく続いた掻く命家達の性事妄想は、収束へと向かった。


だが、若き掻く命家・フタナリアス=ペニバンド率いる「器具派」と、遅漏師・アスホール=ペッティングスの「人形派」が、これに反発した。


この反発した二派は、「ラブドール同盟」を組み、フルボッキ条約の撤回を求めた。


しかし、二大精力である陰嚢派と包茎派は、これを相手としなかった。




 そして、射精暦1080年、それは遂に起きた。


 業を煮やしたラブドール同盟が武力蜂起。陰嚢派・包茎派を駆逐する事態が勃発したのだ。

それは、その後19年に渡って続いた「エネマグラ闘争」の幕開けである。


時代は混沌の潮流となり、どこへ行くとも知らず、時を刻みだした…。

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