ワスレルート

 そうしてその子供は、教会からの反対を跳ね除け、勇者の手により、大切に育てられた。

 スライムの力を取り込んだものとして、『スロボロウ』と名づけられた。

 やがてその子供は、スライムを滅ぼす存在、後に、『スライム・スレイヤー』と呼ばれる存在へと成長することになるのだが、それはまた別のお話。

 別の人格の、別のお話。


 だって私は、何も覚えてなかったから。

 死の淵に、ローションに意識を移すことに失敗した先代の記憶も、彼が引き継いだという長老の記憶も、精霊喰いになって全てのスライムを救う使命も。

 だから、成長し、『精霊喰いイリーガル・イーター』と対峙した時に、分かるはずもなかった。

 『それ』が、他ならぬ自分自身であることに。

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転生したらスライムだった・嫌(けん) アイデアの女神に溺愛されて夜も眠れない @azuma_light

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