第34話 夏の夜の夢
何もかも、どうでもよかった。
友達も、恋人も、家族も…そして自分さえも、どうでもよかった。
この世界には何一つとして俺の心を引くものなど存在しない。
なぜだろう⁇
俺も人として生まれて、人並みにこの世界のルールを植え付けられて、社会的なヒト科の動物の一匹として生きているというのに、どうもこの世界は俺にはしっくりこない様だ。
生まれた時からこの世界に存在するルール。
法律に明記されていなくても、確かに存在する人間を管理する為のシステム。
生きる為に金を稼ぎ、稼いだ金で物を買う。
物を売る為に欲を生み出す仕組みを構築し、一方では他人の生み出した戦略に溺れて物を購入する。
マルクス流に言えば、生産する手段を持たない労働者の群れは、唯一自らが所有する労働力という資産を差し出す事でどうにかこうにか慎ましい生活を営んでいる。
奴隷よりもよっぽど奴隷らしい労働者達は、消費という行為を自由と崇め奉り、自由の為に労働力という名の命を差し出し続ける。
狂っている。
とても正気の沙汰じゃない。
でも狂っている等と口に出せば俺は社会不適合にカテゴライズされてしまう。
どうなっている、この世界は⁇
なんで誰も声をあげないんだ⁇
労働者から最後の血の一滴まで搾り取る為のシステムをなぜ労働者が守ろうとする⁇
踏み潰されるのがきもちいいのか⁇
それにしては苦しそうな顔をしているじゃないか⁇
どうして、どいつもこいつも…
『ねぇ‼︎』
……。
『もしもぉ〜し』
……。
『ねぇってばぁ‼︎』
『俺に何か用ですか⁇』
いつの間にやら俺の前に現れた少女は満面の笑みを讃えながら俺に尋ねた。
『君、ちゃんと息出来てる⁇』
何だこいつ⁇
こんな
こんな
なに寝ぼけた事ほざいてやがる⁇
どこの箱入り娘だこいつは⁇
『私はねぇ、息、上手く出来てないよ』
……。
『でもねぇ〜、私、もうすぐ死んじゃうんだよ。いいでしょう⁇』
!!!!!⁇
にししししっ。と笑う少女に、いつの間にか俺の目は奪われていた。
刑務所って青春だ!!〜私の2回目の青い春〜 GK506 @GK506
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