第14話 200mリレー対決①
1工場の第1走者は
彼は
仲根さんは、対戦相手の事等まるで意に介していないとでもいう様に、ただ真っ直ぐ前だけを見据えている。
彼の燃え
官僚という地位に就き、将来安泰、順風満帆の人生から、刑務所という人間社会のどん底へと落ちて来たのに、なぜ彼の心はまだ折れていないのであろうか?
むしろ仲根さんの心は折れるどころか、マグマの様に燃え滾っている様に見える。
その理由は何だ?
彼を突き動かす原動力は何なのだ?
自分の事を棚上げして言わせて貰うのであれば、刑務所という場所には、比較的人生が上手くいっていない人間が集まるものである。
生活に
もともと高い場所にいた者は、刑務所という世界に於いてはマイノリティであって、大多数の受刑者は、もともと低い場所にいた者ばかりなのである。
なのに彼らの心は、犯罪者の
マグマの様に、熱く燃え滾る心を有する者は、この刑務所、いや、
私も、間違いなく【飼い犬】の一匹に違いない。
悲しいけれど、私の首には、頑強な首輪がはめられている。
だが、仲根さんは違う。
彼の目は、この刑務所という荒んだ世界の中に於いても、死んでいない。
彼は、何も諦めていないのだ。
仲根さんはどの様な理想を持っているのであろうか?
どんな未来を
どうして、あんなにも命の炎を全力で燃やし続けられるのだろうか?
わからない。
わからないけれど、彼の生き様を見ていたら、一つだけわかる事がある。
それは、彼はいつの日かきっと理想の未来を手に入れるという事だ。
それが、5年後なのか10年後なのか、はたまた彼の死の間際なのかはわからないけれども、それでも彼は、きっと夢を掴み取る。
仮にその道の途中で息絶えたとしても、彼は、彼の人生に一片の悔いも残さずに死んでいく事であろう。
だから、期待せずにはいられない。
彼の生き様に。
彼の
私の目は奪われてしまう。
美しく燃え滾る青い炎は、
『いけっ、仲根さん!!』
スタートの合図と共に、仲根さんが飛び切りのスタートを切った。
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