第21話 マルルカの決心(1)
気づくと、あたしは自分のベッドにいた。
「マルルカ、気が付いたかい?」
アルさんとオルトがあたしの顔をじっと見ている。
「アルさん、オルト・・・・・・ごめんなさい。あたし・・・・・・」
オルトがずっとあたしの手を握っていてくれてた。
アルさんもオルトも、あたしのこと、わかってたんだ。
だから、ちゃんと自分と向き合えるだけの力をくれた。自分で気づくことができるように
きっと・・・・・・
「ポロ茶だよ。熱いから気を付けて」
アルさんが、いつものポロ茶を渡してくれた。
カップを受け取るとお茶の温かさがじんわりと伝わってくる。最初にアルさんに会った時もポロ茶をいれてくれたんだっけ。
「アルさん、あたし・・・・・・」
涙がポロポロとこぼれてきて、言いたいことがいっぱいあるのに・・・・・・
何を言ったらいいかわかんない。
「マルルカ、無理をしなくていい。がまんもしなくていい。
君は、一人じゃないんだよ。
つらいときには僕たちがいる。ここに君の居場所があることを忘れないで」
アルさんはそう言うと、オルトと一緒に部屋を出て行った。
涙が止まらない。
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「少し、荒療治だったか?」
「いえ、いつの日か必ず訪れる出来事です。それが今日だっただけの話・・・・・・
マルルカは乗り越えることができると思ったのでしょう? 主様は・・・・・・」
魔王城のとある1室。テラス窓からの青い月明かりに静かに照らされている部屋にいるのは漆黒のアルレオールと深紅のオルティウスの2人。
アルレオールはテラスの窓から灯りを捧げている月をじっと見ている。オルティウスはアルレオールの足元に跪いて、アルレオールの投げかけた言葉に静かに答えた。
「無礼を承知でお伺いいたします。
主様は、なぜマルルカにそこまでご興味をお持ちになるのでしょうか?
これまでに一度たりともなかったこと・・・・・・
「なぜだろう・・・・・・ 私にもわからぬ。
先が読めぬ、ということは、案外楽しいものだ。
そうは思わぬか? オルティウス」
「主様がそう仰せであれば・・・・・・
ところで、ハリーはいかがされますか?」
「出世欲、上昇欲の強い男よ。あれについてはマルルカの好きにさせよう。
どうするのか・・・・・・そのほうが面白そうだ。
しばらくはモリーを頼むぞ。 オルト兄様!!」
アルレオールはオルティウスを見て楽しそうに笑った。
「わかったよ! 僕に任せて アル兄ぃ!」
2人の笑顔が冷たい月明かりに浮かんだ。
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う・・・・・・目が開かない。 腫れぼったい。
泣きながら、知らないうちに眠ってしまったみたいだ。
メイドさんもオルトも来ない。
そういえば、ずっとオルトがそばにいた。その前はアルさん。
1か月くらいしか経ってないって言うけど、あたしが2人と過ごした時間は1年以上にもなる。
帰る場所のないあたしに居場所をくれて、魔力の歪みを直してくれた。
そして、知らないことをたくさん教えてくれた。
アルさんもオルトも普通の人じゃないっていうことはわかる。聞くのも、知るのもちょっと怖い。今までもそうだったように、アルさんは、あたしに知る準備ができたときに、きっとまたいつか教えてくれるんだと思う。
あたしは何をしたい?
冒険者? メザク様のところ?
ハリーとデレクを谷底に突き落とすのもいいかな・・・アハハ・・・・・・
簡単に突き落とせそうもないけど・・・・・・
あぁぁぁ・・・・・・これが復讐したいっていう気持ち。
ちょっと想像したら、心が軽くなった。
アルさんは、命ある者は他の命を糧にしているって言ってた。あたしが2人を谷底に突き落としたら、2人の命なんて私の糧にできないから粗末にすることになっちゃうし、2人の命に感謝もできない。
できないし、できたとしてもやっちゃいけないことだ!!
決めた! やっぱり、アルさんのおうちで薬草を育てる!!
あたしみたいに不安になったり、心を落ち着けたい人もいるかもしれない。
病気の人をちょっと楽にできる薬草を作りたい。アルさんがあたしを助けてくれたみたいに・・・・・・
魔法のない世界、魔法を使えない世界。
よくわからないけど、薬草のこととかをもっと勉強して、誰かを助けられたらい。
人一倍魔力量が多いのが唯一の取柄だったのに魔法のない世界か・・・・・・
フフフ・・・・・・変なことになっちゃったけど、それがいい。
この世界にいたら、またどこかでハリーとデレクに会うかもしれないし、会ったらまた魔力が暴走するか、もしかしたら、今度は殺したいって思うかもしれない。
それはダメだ!! きっとアルさんに叱られる。
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