第2話 魔王討伐後(1)
「マルルカ、気が付いたか?」
目をあけると、しゃがみ込んであたしの顔を心配そうにして覗き込んでいるいるデレクが目に入った。
「マルルカ、大丈夫か?」
ハリーがこちらに歩いてくる。きれいなブロンドの髪も汗でぐっしょりとしている。
ハリーはサラサラの髪をいつも自慢していて、すぐに、「俺の周りにそよ風を吹かせろ」って魔法を命令してくるのに・・・・・・今やってあげたら喜ぶだろうなぁ・・・・・・
どうでもいいようなことを思い出してしまう。
「ハリー、もうウインドを使う魔力も残ってない」
ゆっくりと体を起こしてみたけど、力がぜんぜん入らない。
「いいさ、それより、早くここを出て帰ろう。
何かお宝がないか少し辺りを探してみたけど、めぼしいのはなかったからね」
そう言って、ハリーは手にしていた数本の回復薬ポーションを見せた。
「本物らしい。まぁ、今の俺たちじゃぁ、低級回復薬でもありがたいってことだ」
ハリーはポーションを1口飲んで、デレクに1本渡す。
「デレク、マルルカを担いでくれるか? こいつはちっこいから、それほどお前の負担にはならないだろうよ」
「あぁ、魔気が消えたとはいえ、この城には長くいたくねぇな。まだ魔人がいるかもしれんし・・・・・・。もう、戦う力はねぇからよ」
デレクはポーションを流し込むように飲み、座り込んでいたマルルカを大きい背中にひょいと担ぎ上げた。
「あたしにもポーションちょうだい」って言いたかったけど、やめた。
デレクにおんぶされているだけだし・・・・・・
ハリーの見つけた数本のポーションは、今は貴重だ。
あたしの体力も魔力も、今はすっからかんのからっぽ。そのうち回復してくるよね……
自分の足で歩くことすらできない。ましてや魔法がなきゃ、子どもの背丈しかないあたしは2人の歩くスピードになんかついていけやしない。
あたしは、魔法が使えなきゃ足手まといのちっちゃな子どもとおんなじだ。
「魔物の気配は消えたとはいえ、用心していくぞ。俺が前をいくからデレクはついてこい」
ハリーは一度鞘に納めた剣をもう一度抜き先に歩き出した。
デレクもそれに答えるように、あたしを片手で担いだまま、剣を持ってハリーの後に続いた。
デレクの硬い鎧におんぶしてもらっても、ゴツゴツしてて居心地はあんまりよくない。・・・でも、この鎧がデレクをずっと守ってたんだもんね。文句言っちゃだめだね。
デレクの髪って、意外と柔らかいなぁ。こげ茶でツンツンした髪だったからもっと硬いと思ったよ。
デレク汗臭いなぁ、魔力がすこしもどったら、2人ともきれいにしてあげよー。
あっ あたしもきっとそうだよね・・・・・・
あれこれ頭に浮かんでは消え、浮かんでは消えて・・・・・・
デレクの背中でいつの間にか意識を離した。
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