第18話 新たな相棒、昔の相棒

 数週間後。


 長きにわたる療養期間を経て、ようやく響希ひびきは復帰を果たした。

 ジオメトリの幹部には《治癒》の起源所持者がいるらしく途中からはその人が治療をしてくれた。治癒の治療を受けてからは劇的に回復が早くなった。


「響希君、彼女は末莉坂まつりざかかえでちゃん。――― 楓ちゃんって呼んであげておくれ」

「何でリーダーが勝手に決めるんですか。・・・・・・ よろしく、蒲水かまみず君」


 響希が療養中、ジオメトリはめまぐるしく状況が変わっていた。人事異動が発表されたのだ。

 人事異動といっても内容は簡易なもので、主な変化はバディが再編されるだけだ。当然、雪也せつやとのバディは解消され次の任務からは末莉坂楓という少女と新たにバディを組むことになった。


 わざわざ病室まで足を運んでくれた。彼女はジオメトリ幹部のひとりだ。自分と年齢はそう違わないはずだが、幹部となると恐れ入る。


 挨拶を交わしつつ、事の成り行きを確認する。


「この人事異動は何のためのものですか?」

「ミアプラは今回、総力を挙げて攻め込んできた。ジオメトリの犠牲者は後を絶たない。・・・・・・そこで単独行動が許されている幹部と、ロマネスコの人とでバディを組むという案が出たの」

「足を引っ張ってしまわないですか?」

「そこは、リーダーの判断かな。――― ところで君、真面目すぎ」


 彼女は上目遣いで率直な意見を述べられた。

 真面目と言われても元からこの性格なので直しようがない。


「良いではないか。響希君の良さだよ」

「・・・・・・ 何でリーダーが応えるんですか」


 そう言いつつも響希はなぜかこの三人で会話をすることに心地よさを覚えていた。


 任務の確認に向かうため、一度執務室に寄る最中雪也に出くわした。声を掛けようと思ったが、彼は響希の存在に気付くことなく新しくバディを組んだと思われる相手に怒りをぶつけていた。

 というより癇癪を起こしているように見える。


「俺が先輩を苦手なのは知ってますよね!いちいち構わないでください‼」

「アラアラアラアラァ。可愛い弟の反抗期かしらぁ」


 気圧されて近づけないでいると「幹部のサラ・アンジェラさん。あのふたり、専門学校の先輩後輩関係らしい」と楓から耳打ちされる。ジオメトリ内で雪也とサラは犬猿の仲なのは有名で、ふたりがバディを組んだことで仲違いに拍車が掛かっているそうだ。・・・・・・ 観察している限り雪也が一方的にサラさんを毛嫌いしているように見えなくもないが。


 響希が間に入っても治まることはないだろう。現に一度リーダーと麻衣さんの口論に油を注いでしまった過去がある。ここは気付かなかったふりをして任務に集中しようと心に決めた。

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