第14話 駆ける少女

 ひたすら駆ける、駆ける、駆ける――― 風に乗って。


かえでちゃん、悪いけど助けて」


 リーダーは降って湧いたように個人通信でこんなことを言ってのけた。しかも全く助けてほしくなさそうに。


 しかし当の本人、末莉坂まつりざかかえではリーダーの指示に逆らうことはできない。楓も幹部のひとりだが、リーダー以上に凄い人は知らない。念のため彼の指示に従うことにした。連絡を寄越されてすぐ他の幹部に一時離脱する旨を伝え、施設内の警備の任を抜けた。

 そして現在にいたる。


 道案内をしてくれているジュリアの人員は新人で、拙いながらも一番近いルートを伝達してくれる。そのルートは本来ならば、人が想像つかないルートも含まれている。彼は内心おっかなびっくり案内しているのも無理はない。楓は今、建物の上を跳び超えるかたちで疾走している。 こんな芸当、起源がなければできない。

(――― そういえば、ロマネスコにも新人が来るって言ってたっけ・・・・・・ )


 気を抜かず、起源の輝を夜空に放ちながら楓はそんなことを考えた。


 深い夜の中に照り輝く起源は、異質な存在感を放っていた。




 サラ先輩は事後処理を率先して行ってくれた。


 雪也は疲労困憊で、ずっとその様子をだらしなく眺めていた。


「帰還命令が出てる。双子はフラクタルに送還よ。・・・・・・ この子たち、フラクタルにいた子たち

らしいわ。脱走の容疑が掛けられていたの」

「脱走、ですか」


 事の経緯は不明だが、フラクタルの人間だったとは。


 脱走した子が敵組織に参加し、危害を与えようとしていたことに、雪也は不安を感じた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る