第6話 力也の糾弾

 暗く気分さえ落ち込みそうになる廊下にコツコツと革靴の音が反響している。

 

 ここは地下牢だ。

 

 起源の犯罪を犯した者だけが入居する、しかし何の変哲もないただの地下牢。ひとり部屋しかないこの牢屋にはそれぞれ番号が記載されている。


 具現装置リアライズ・ツールを外してしまえばただの一般人になる。一般人と同等の地下牢に入れても問題ないのだが、そうしないのには理由がある。


 力也は目的の三十二番にたどり着くと幹部の権限で解錠した。躊躇なく足を踏み入れる。


「やあ、体調はいかがかな?」


 わざとおどけた口調で問いかける。


 不良少年のひとり、はやし翔流かける響希ひびき雪也せつやが関わった案件の首謀者だ。


 翔流は力也をにらみ返した。


 病院の治療が終わり取り調べを受けた後、首謀者が自分だと判明するとフラクタルの地下牢に入れられた。


 取り調べの時とはまた違う、ジオメトリの幹部。翔流は警戒をあらわにした。


「少々聞きたいことがあってね」


 男はさして気にする様子もなく手近な場所に腰を下ろした。ずけずけと踏み入ってく態度が癪に障る。


「単刀直入に聞く。あの具現装置リアライズ・ツールはどこで手に入れた?」


 取り調べで幾度も問いただされた内容。ここでもそれが繰り返された。


「・・・・・・ 何回もいってるだろ。知らない奴が俺たちにくれたんだよ‼」


 翔流は怒鳴り散らした。頭のてっぺんまで血が一気に上った。


 力也は翔流の怒鳴り声に動じない。


「いや、違うね」


 翔流は力也が次に出した言葉に息をのんだ。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る