第2話「Word」
事象・・・ある事情のもとで、表面に現れた事柄のこと。
事象使い・・・事象をもとにその力を増幅させ、操る人間のこと。
瓦礫の山の中で男は言った
君たちと同じ「言葉」使いだと。
「言葉使い?」
拘束の解かれた圭が男、三船 歩生に問う。
「まぁその話はここを離れてからにしようか。ほら」
三船が指を指した先にはサイレンを鳴らして近づいてくるパトカーの群れが
「あーこれはやばい。」
「確実に捕まるなこいつは」
俺と圭は今までやってきた行いを思いだし、ゾッとする。
「ほら、二人とも何やってるの、早くしないとほんとに逮捕されしゃうよー。」
「「はぁ?」」
パトカーの方に向かって歩生が歩いてゆく、さも一般人ですよと言うほどに。
「仕方ない、腹くくるぞ圭」
「はぁ、仕方ない。やり残したこと沢山あったなぁ」
俺たちは後ろを歩いてゆく。
そして俺たち横をパトカーが...通り過ぎていく?
「どういうことだ。」
「ん?あぁ、こいつのおかげだ。」
「「は??」」
歩生は自身の隣を指をさすが、そこには誰もいない。
「あぁそういうことか。」
何かわかったような声をして、そして
「ていッ!」
自身の隣にチョップをした
そして
「痛い」
そのチョップは空中で止まったと思ったらそこから一人の女性が現れた。
「こら涼花、お前この二人見つけてから見えないようにしてしてやがったな。」
「私の能力は戦闘向きじゃない。危険と判断した。だから隠してた。」
涼花といわれた女性は歩生にチョップされた頭を押さえながら歩生に語る。
「はぁ全く。」
ため息を吐く。
「彼女は三原 涼花(みはら りょうか)。俺のいる組織の一員だ。」
「まぁさっき警察が通りすぎていったのはこいつの能力で俺たちの姿が隠されてた状態だったからだ」
「そう、私のおかげ」
歩生と涼花はお互いに語る。
「それで俺たちはどこに向かってるんだ?」
「あぁそういえば言っていなかったね。」
「今から君たちには僕たちの組織の本部に来てもらうよ!」
そう高らかに宣言された。
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歩生と涼花の足がとあるビルの前で止まる。
「ふい~やっと着いた。」
「遠かった。今度からは車での出勤を希望する。」
「わかったわかった」
歩生と涼花の二人はそんなことを言っている。
「うへぇ、無駄にでけぇ」
俺と圭は建物の大きさに圧倒されていた。
「ほら、君たちも早く入りなよ。うちのトップと話してもらうから」
ほおけている俺たちに歩生が声をかけてきた。
「ほんと何の組織だよここ」
圭がそんなことをいって入っていった。
途中で涼花とは別れ、歩生についてエレベーターに入る。
この建物の名前は「中央管理局」言ってしまえばこの町の管理のほぼすべてを行っている場所だ。
「いったいどんな組織なんだよここは」
「知るかよ。そもそもこの建物に顔パスで入れるこの連中なんていたのかよ」
「普通なら、顔認証、瞳認証、指紋認証、声帯認証をしたうえで入れる場所だからなぁ。ますますわからん。」
「君たち聞こえてるからね。」
「「あ、はい。」」
そうこうしているとエレベーターが止まる。
「よしついた。」
だが
「いやいや止まったんだろこのエレベーター。地下の4階と5階の間で止まってるじゃねぇか!」
「まぁ確かに初めて見るとビビるよねぇ」
エレベーターの扉が開いた。
「おぉ、まじかぁ!」
「この建物にこんな場所があったのか」
「ようこそ、ここが僕たち組織の隠れ家」
「さぁて、君たちにはまずうちの団長と話してもらうから団長の部屋に案内するよ。」
「あんたら一体なにものだよ。」
「まぁその辺も団長に聞けばいい。」
そんな感じで恐らく団長の部屋っぽい扉の前についた。
「おーい。いるかぁ?」
歩生が乱雑に扉を開け入ってゆく
「ようやく帰ってきましたか。」
中には女性が1人。いかにも仕事人って感じの女性だ。
この人が団長か。恐らく圭も同じことを考えているだろう。
「さっき帰って来たばっかりだよ。」
「それでそこの二人はいったいなに?」
「あぁ、例の「ビル破壊」の二人だよ」
「!!」
「まぁ落ち着けよ、団長。」
「はぁ、まあ大方よそはつきますけど。それと」
「団長はあなたでしょうが!」
「「は?」」
俺たちはどうやらこの男に遊ばれたようだ。
「あーバレちゃったかー。そう俺がここの団長。三船 歩生だ。」
腹立つ顔してんな。
「それで、いったいその団長さんが俺たちガキ二人に何の用で?」
圭が警戒しながら質問をする。
「落ち着きなって、最初にも言ったけれど別に敵じゃないんだから。あ!これは本当だよ。」
「ッチ‼」
「賢明な判断も感謝するよ。ほら座って座って」
「はぁ、ほら圭警戒するだけ疲れるだけだ。座って話聞こうぜ。」
「・・・あぁ」
「うちの団長が本当すいません」
女性が俺たちに謝罪する。
「それで、あんたら一体何者だよ?」
「それを説明するにあたって君たちに確認したいことが一つだけある。」
「なんだよいったい?」
「君たちは事象使いについて知っているかい?」
「はぁ知ってるに決まってる。この町に住んでればいやでも知ることになる。」
異能都市、俺たちのいるこの都市はそう呼ばれている。
人口の約9割が何かしらの異能を持っていることからそんな呼び名が付いたらしい。
その異能力者達の最たるものが事象使いだ。
一定の条件が必要だがそれをクリアすればいつでも異能を使える。
簡単に言ってしまえば、静電気を起こせれば電撃を放つことができ、マッチで火をつけると炎を操ることができるって言うふざけた話だ。
「まぁそりゃそうだよね。それじゃあ「言葉」使いはわかるかな」
「それがわからん。確かに事象使いの中に声をもとにするやつがいるって聞いたことがあるけどそれとも違うんだろ?」
「まぁあれも言葉っちゃ言葉だけど、ものが違う。まぁそうだなぁ。簡単に言うなら言葉使いは言葉の力を使える。」
「「は?」」
わかんないかー。苦笑いで歩生が言う。
「そうだなぁ。僕の能力でいうなら」
「団長。あなたのは特殊すぎるし、切り札なんだから簡単に言うのはやめてください。」
歩生が自身の能力を言おうとしてすかさず秘書らしき女性が止める
「じゃあ利和(りわ)の能力で説明させてくれ、やっぱり実際に見た方が早いし。」
「はぁ、わかりました。」
若干不満そうではあるが秘書もとい利和と呼ばれた女性は手にもっていた書類を置いてこちらを向く。
「彼女の名前は道楽円 利和(どうらくえん りわ)。僕の秘書であり、この組織のナンバー2。そして僕たちと同じ言葉使い。」
歩生がわくわくしながら俺たちに彼女のことを語る。
「そして彼女の能力は」
「きてとび」
「草木禽獣(そうもくきんじゅう)。契約した生物を召喚し使役する能力だ。」
そういうと利和の目の前に鳶(トンビ)が現れた。
「まぁそういうこと。これが私たち言葉使い。」
召喚された鳶(トンビ)に構いながら利和はそう言った。
「事象には何かしらの要因や原因がある。簡単に言ってしまえば種ありマジックだ。」
「それに対して僕たちのは種も仕掛けもない。文字通りいや、言葉通りのことを起こせる。」
「それってある意味事象使いよりも使い勝手いいんじゃないか?」
圭が語っている歩生に問いをかける。
「残念ながらそうもいかない。確かに利和のようなものならいいのかもしれない。だけど志木城 圭君。君のような能力ならどうだい?」
「能力名「許謀偽計(さぼうぎけい)」。罠を瞬時に仕掛け、それに人を嵌める能力。」
「今でこそ使いこなせてるけれど、能力判定テストの時はどうだったか、覚えていると思うよ。」
「それは...」
圭が押し黙る。
能力判定テスト。小学生になるくらいに自身の異能はいったいどんなものなのか判定するためのものだ。
内容は血液を注射で採血し、機械の中に流すと、自身の異能力の名前が表示されるものだ。
だが、まれに登録されていない場合がある、その場合は基本親が名前を決めたり、本人が命名したりする。
だが、圭とそして俺の場合のそれとは違った。
ただそこには見たことも聞いたこともない名前だけが表示されていた。
能力が何かわからなければ使えない。俺と圭は能力なしと判断された。
「なるほどねぇ。能力の名前だけは表示されるわけだ、たちが悪い」
要は言葉使いを判断することはできるが、能力の内容はわからず、能力なしと判断されるわけだ。
「多分「言葉」だからかな。正直これは研究も何も進んでないからこればっかりは何とも言えない。」
能力なしはこの都市だと最低ランク、いじめの対象になる。
「まぁそういうわけで、言葉使いは大概能力の使い方がわからなくて、能力なしと変わらない場合が多いんだよ。」
「なるほどな。言葉使いについてはわかった。次だ、あんたらはいったい何者だよ。」
「そういえば言ってなかったね。僕たちはそんな数の少ない言葉使いのさらに数の少ない四字熟語使いの組織」
「Word(ワード)」
「簡単に言ってしまえばこの都市の秘密組織の1つであり、そしてこの場所はそんな年の治外法権地帯だ。」
「なるほなぁ」
正直ある程度都市の組織ってのは予想してたけれど、秘密組織の1つだったとは。予想外だ。
そして治外法権地帯。俺たちの命は現状彼ら次第だ。
「それじゃあ最後だ。なぜ俺たちをここに連れてきた?」
「なぜも何も。君たちを勧誘するためだよ。」
「勧誘?」
圭が何言ってるんだこいつみたいな顔をしている。
「そう。君たち二人を組織の一員しようと思ってる。」
「理由を教えてくれ。流石にわけわからん。仮に俺たちはこの都市の施設を少なくとも4つ以上は破壊している。」
「そんな俺たちを都市の秘密組織に入れたい?ほんとに何言ってるんだ?」
歩生があははーと笑いながら、そして利和が頭を抱えている
「まぁ大まかな理由は三つ!」
歩生が指を三本立てながら語る。
「1つは優秀な人材と判断するから。さっきも言ったけど言葉使いは数は少なく、見つけるのも大変だ。」
「そんな状態で都市の施設を何個も破壊する能力持ち。僕は利用する方が有益だと思うね」
「2つ目は君たちの目的が知りたいから、君たちがどうして施設を破壊しているのか。」
「その理由に個人的に興味がある。」
それとなんとなく都市の闇も関連してそうだしねーとへらへらしながら歩生は語る。
「そして三つ目それは。君の能力だよ。龍牙崎 影(りゅうがざき かげ)君。もともと君たちを組織に入れる理由はさっきの二点だけだった。」
「だけど、さっき君。僕の拘束破ったよね?しかも、なんのモーションもなしに。」
「どういった能力なのか。非常に興味がある。」
歩生は真剣な眼差しで俺の方を向いてくる。
「俺の能力...。」
「教えてくれないかい?」
歩生が笑顔で俺に問いかけてくる。
「....」
圭が何か言いたそうな顔をしているが仕方ない。
いま現在俺たちに生殺与奪の権利はない。
「俺の能力は」
俺はさっきから少し離れた場所にいた利和に近づき、鳶に触れる。
「事実無根(じじつむこん)。」
シュンッ‼
鳶が姿を消す。
「!?」
利和が驚いた顔をしている。
「俺に接触した異能力は無力化する。」
「それは例えどんなに強力なものでも、無力化し、打ち消す。」
「予想外な能力だねぇ。」
「その能力は対異能力者には最強だ。」
まじめな顔で歩生向かって圭は言う。
「ふふふ、ありがとう影君」
「そしてやっぱり君たちにはここに入って貰おう。」
「君たちの目的は知らないが、そのためにこの場所を使うといい。」
「どうだい?君たちにとっては悪くない条件のはずだ。」
ついに黙っていた圭が言葉を放つ。
「俺たちに拒否権がないのによくいうな」
「そうだね。まぁ断ってくれても構わないよ。」
「何か手を下すことをしないと誓うし、ここから無事に返すことを約束しよう。」
「それで君たちの目的が達成できるのなら、ね。」
その瞳は真っすぐで嘘をついているようには見えなかった。
「さっきも言ったがこれはあくまで勧誘だ。」
「別に君たちに強要するつもりはない。」
歩生はそう言って、自分の執務机の椅子に戻っていった。
「どうする?影」
圭が聞いてくる。
「俺は...」
目的達成のために協力を得られるのなら、それはありがたいことではある。
だが、まだあの男を俺たちは信用しきれてない。
「俺はお前を信じてついていく。だからお前が思うように決めろ。」
圭がそんなこと言った。
「圭...」
圭は俺に押し付けた。いや、違うな。恐らく今あの男が求めているのは俺だ。
勿論のことも人材として欲しいのだろうが、優先されているのは俺だろう。
だから、俺に任せたのだ。どっちにせよお前についてゆくと。
「...1つ条件がある。」
「何かな」
俺は歩生の机の前に行き、手を差し出す。
「俺と握手できるか?」
「もちろん」
歩生は躊躇せずにすぐに握手をした。
俺の能力を見た後で触れてきた。
最悪俺に不意打ちを食らうかもしれないのに
悔しいがこの男察していたが、根本はいい人みたいだ。
「この組織に入るよ」
圭に向けて言葉をかける。
「わかった。お前のその選択を信じるよ。」
圭はやれやれといった感じで俺にそう言った。
「二名の入団を許可する。よろしく頼むよ」
笑顔で歩生はそう言った。
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《その後の影と利和の会話》
「そういえばトbじゃなくて、私の鳶はどうなったんですか?」
「多分元居た場所に戻されただけだと思うから、もう一度呼べば来ると思いますよ」
「そうですか、良かった。」
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