男爵令嬢プリシア・アルゴンの狂宴
「やった! やってやったわ!」
くぅぅ!! やっと私の推しの王子様と!
「スチルで何時間でも眺めていられたあのご尊顔の本物がこれからはいつでも私の目の前に」
くぅぅ!! あのパトリシアとか言う女に罪を着せるのに時間がかかっちゃったけど、なんとか婚約破棄エンドにっこぎつけたわ。
「教師の行き遅れババァの小言もこれで気にしないでいいわね、なんせ私は未来の王妃、なにか言ってきたら不敬罪を匂わせて黙らせてやるんだから」
「それにしても突然乙女ゲームの世界に入り込むなんて驚いたわ、最初は記憶喪失を疑われて大変だったわよ、いくら主人公の男爵家に来たって言っても使用人やら出入りする商人の名前まではホームページにも載ってなかったし」
「でもゲームの強制力っていうのかしら、あの悪役令嬢パトリシアを追い出して王子様と結ばれてエンドロールっていうところまでは無事に来ることができたわね、これでハッピーエンドよ」
っと歓喜しているとドアがノックされる。
「なに?」
「お嬢様、殿下が参られました」
「入ってもらって」
「畏まりました」
数分後、私の王子様が現れた。
「やぁプリシア嬢、今日は以前から予約していたレストランに招待しようと思ってね、都合は大丈夫かい?」
「はい! もちろんです、なにか予定があったとしてもこのプリシアは王子を最優先にします!」
「はっはっは、そうかさすが私の選んだ令嬢だね、それじゃ行こうか」
わざわざ私のためにレストランを取ってくれていたなんて……はぁぁさすが私の王子さま。
馬車に優しくエスコートされた私はこの世の春を満喫する。
◇ ◇
そのはずだったのだが。
「おいそこの君、どういうことだ? このレストランを今日予約していたのだがオープンしていないではないか」
「はい? ……って殿下! はい、ええと私はその、向かいのアンティーク店の人間なので詳しいことはわからないのですが、何やら偉い剣幕で人が走ってきたと思ったら大勢で大きな荷物を抱えたり荷馬車にものを載せて、どこかへ走り去ってしまったようです」
「本当のことか?」
「はい、もちろんでございます、それこそお祭りかと思うくらいの喧騒でしたから目撃者はたくさん……そういえばこの店だけではなく、よそでも同じような騒ぎがあったと風のうわさで聞きました」
「何ということだ、王子であるこの私が来店する日に営業せんとは……こんな店営業停止に……それでは生ぬるいな、店主一同国外追放にしてやる」
どうやら臨時休業なようです、私と王子の大事な夜にケチをつけるなんて最低なお店ですね。
「悪いなプリシア、聞こえてたと思うんだがこの店はもう許せん、別の場所に回ろう」
「ええ王子様、私はどこへでもついていきます」
◇ ◇
その後も名高い店舗はなぜか営業していなくて、随分と格式の下がったステーキレストランで硬い肉を食べる羽目になってしまいました。
「まったくなんていうことだ、この貴族街は弛んでいるな」
「そうですよ、王子がわざわざ来てあげてるんですから歓迎するくらいじゃないと」
「申し訳なかったな、侘びにドレスを贈ろう」
「まぁ! 私100万ゴールドの館のドレスがほしいです」
「分かった、後日針子を君の家に行かせるよ」
そうして別れたのだけれど……。
「今日も針子さん来ないな、どうしちゃったんだろ?」
◇ ◇
彼女は知らない、レストランは宰相の手のものであったことを、100万ゴールドの館はダンテ
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