第18話 百花姫
初めて見る
「誰だキミは。いや、それよりアネモネには触るな。毒があるんだぞ。」
「ん?…ああ、これが気になるのかい?」
徒花姫は視線に気づき、空いている片手で青薔薇に触れました。
「サンクチュアリで目を覚ましたらすでにこの姿だったんだが、これは私も気に入ってる。こんな色の薔薇、ありえないけどね。いいだろう?」
険しい表情を崩し急ににこっと微笑んだ彼女はまるで
「…悪かったね、怖がらせるつもりはなかったんだ。本当だよ。」
自由になったランは逃げることも出来ましたが、不思議とそのまま
「それは…見たこともないくらい大きいけど、
言い当てられて思わずじりじりと後ずさったランは、急に目の前に差し出された手に困惑しました。彼女が何らかの行動を期待してこちらを見ているのはわかったのですが、その頃のランはまだ「握手」を知らなかったのです。どうすればいいのか迷っていると、彼女は構わずにぐいっと自分から手を握ってきたので、再びランは驚いて飛び上がりそうになりました。
「はじめまして、私は
「わ、私に…?」
「そうとも!さぁおいで。ようこそ、私の植物園へ!」
ランはわけがわからないまま百花姫と名乗った彼女に引っ張られ、
ランは壁際に設置された棚にずらりと並んだ
「それは全部種だよ。ここへやってきてから採取し続けてるんだ。」
百花姫は奥の方から小さな椅子を引っ張り出してきてランの前に置くと、机の上の物を乱雑にずらしてそこにどかっと座ります。
「狭いところですまないが、とりあえずそこへ。君に話があるんだ。」
「話……?」
ランはいぶかしがりながらも用意された椅子に腰かけました。百花姫は小さく頷くと部屋の中を見回しながら話し始めました。
「見ての通り、私は植物が大好きでね。サンクチュアリに来たのも思う
「私から見ると君の庭師としての仕事は実にお
唐突な否定の言葉にランは
「…実は…そう、なんです。何をやっていても違和感があるというか…。」
「ふむ。」
百花姫は何か考えるように口元に手を当てました。
「でも、植物のことは好きなんだろう?」
ランが頷くと百花姫はとびきりの笑顔を浮かべて言いました。
「そうか、それならば私が力になろう。」
「え?」
「私が君の仕事を
「で、ですが…、あなたがたはお客様ですから働かせるわけには…」
慌てるランの言葉に百花姫は不服そうな顔をしました。
「そんなことか。では言い換えよう。君は私に
「う…、で、ですが…。」
ランはおろおろした顔を見られないように帽子を深くかぶりなおしましたが、百花姫はテーブルから飛び降りるとランをお構いなしに下から
「では決定だね。よろしく頼むよ。」
それから二人の奇妙な
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