第四章 青薔薇の追憶
第16話 遠き目覚めの日
「ふぅ…これで全部か…。」
「うん、さすがに少し疲れたよ。……ふふ、そうだね、少し休もうかな。」
ランがたった今終えた作業とは庭園の修繕でした。なぜだかいたるところに車輪の
広大な庭園であるサンクチュアリですが、庭師はラン一人だけ。ここでは花が枯れず、加えてランには魔法の
一息ついたランはふと空を見上げました。いつも変わらない穏やかな青。
「……久々に行ってみようかな、あそこへ。」
小さく呟くとランは、
そこは今となっては滅多に誰も訪れることはない、庭園の外れ。大きく育った
全体をつる性植物に覆われたその建物は、一見すると荒れ果てた
棚に並んだ
「こんにちは。遊びに来ました、
砕けた硝子の隙間から、甘い匂いの風が吹き込み、ランの前髪を揺らしました。
人間と違ってドレッサーの誕生の時は
ですがランにとって自分の誕生と呼べる瞬間は明確にありました。そしてそれは同時にこのサンクチュアリがかつて消滅の危機に
景色が鮮やかに色付いたその時を、ランは今でもよく覚えています。
頭の中に一気にたくさんのものが流れ込み、駆け巡る、さながら激流のような衝撃の中で、ランは目の前で起こった出来事の取り返しのつかなさを悟ってしばらく微動だにすることができませんでした。
言葉もなく立ち尽くしていたのは門番の少女とマリーゴールドも同じでした。門番の目からは涙が
これは目覚めたばかりのランと、とある徒花姫のおはなし。
(こんなの、あんまりだ。)
静まり返ったサンクチュアリ。暗い顔をして座り込むマリーゴールドの様子を遠くから
陽光の温かさにも、花々や土の香りにも、この前までは何も感じることはありませんでした。だけど今は、どうしてだろう。こんなにも愛おしい。それなのに。
(それなのに、もうおしまいなんて……。)
穏やかに見える世界が、静かに音もなく
ランはゆっくりとマリーゴールドに近付いていきました。
「……ねぇ、君はどう思う。どうしてあの人は私たちに心を与え、最後の時を迎えさせたのだろう。」
俯いていたマリーゴールドはゆっくりと青ざめた顔を上げてランを見つめ、かすれた声で応えました。
「…そんなの、決まっているじゃありませんか。
「なるほど、……そうかもしれないね。」
ランは力なく微笑み、自分の胸に手を当てました。心を与えられなければ、確かに何も考えずに消えていくことができたでしょう。
「では君も…あの人を、恨むかい?」
ランの言葉にマリーゴールドは何も答えず、場に再び
「二人ともわかっていますね、この世界に近付く
鳥籠を持った彼女は静かな声で話し始めました。
「確かに何もしなければ、サンクチュアリはもうすぐ消滅してしまうでしょう。だけど私はどうしても、それを止めたいのです。“心臓”は砕け散りましたが、いつかまた目覚めるかもしれません。その可能性がある限り、私にはこの世界を守り通す義務があります。」
その言葉にランとマリーゴールドは耳を疑いました。
「一体どうすると?」
尋ねると、門番の少女は揺るぎない強い瞳で言い放ちました。
「新しい
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