第二章 花一華と青の庭師
第6話・一華姫
癒さないで 赦さないで
あの人を置いていかないで
止まれとまれ止まれ 時間よ止まれ
扉の向こうに閉じ込めようとしたのは
あの日の私たちと懐かしいあの花
その徒花姫は、
ここへ来てからどのくらい経つのでしょう。夢の庭園であるサンクチュアリでは本来
サンクチュアリに来た時に門番の少女から渡された物語の本は、薄く
その彼女のガゼボの前でついに立ち止まったのはメイドのドレッサー、マリーゴールドです。彼女は苦虫を噛みつぶしたような表情で一華姫を見下ろしました。
「ちょっと。」
一華姫は微動だにしません。ますます
「ちょっと。…聞いてます?」
するとやっと一華姫はゆっくりと顔を上げます。
「あのねぇあなた、いつまでそうしているおつもり?」
「……」
一華姫は黙ったまま困ったようにまた
「もう
マリーゴールドは本を拾い上げ、表紙の埃を手で払いました。ちょうど風が吹きパラパラとめくれたページは全て、代わり映えのしない同じ絵で埋め尽くされています。
「…思った通り。全部あなたがここで蹲ってる絵ですわね。」
本を閉じ、ため息をつきながらマリーゴールドが低い声で呟きました。
「あなたが一体何に
「……っ!」
これまで何にもあまり反応を示さなかった一華姫でしたが、その言葉に対しては強く首を横に振って応えました。それは、無言であっても
「そこまでです、マリーゴールド。」
急に声がして振り返ると、ガゼボの入口にいつの間にか門番の少女が立っています。
「……あら、お出ましですの?相変わらず本当に目ざといですわね。」
「その行動はあなたの役割から
「ふん、壊れたレコード
マリーゴールドの憎まれ口に門番の少女は何も答えず、持っていた
長い沈黙の後、先に口を開いたのはマリーゴールドの方でした。
「……はいはい、わかりました。わたくしはもう行きますわ。これ以上その顔を見ていたくないですしね。」
マリーゴールドは一華姫を
(誰も…来ないで。何も見たくない…。私はずっと…このままでいたい…いなければならないの…。)
一華姫はぎゅっと目を閉じ、震える手で胸元を抑えました。
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