第5話・お茶会の招待状

「懐かしい~!そんなこともあったね!」 


 出会った時のことを思い出し、舞胡蝶姫と蒲公英姫は顔を見合わせてふふ、と微笑みました。

 あれから二人で何回お茶会したことでしょう。最初はぎこちなかった距離感も今では自然になりました。今のように二人で話に花を咲かせることもあれば、思い思いにそれぞれやりたいことに熱中しているような時もあります。だけどどんなお茶会も二人にとっては楽しい空間でした。  


 「ボク、今が一番幸せだな。」


 会話の切れ目でぽつりと舞胡蝶姫が言いました。


 「前にも言ったけど、ボクは現実世界では病気で、ずっと入院していたから…行きたい場所には行けなかったし、食べたいものも食べれなかったの。だからサンクチュアリに来たことはもともと後悔してなかったけれど、それでもパパやママのことを考えると寂しくなることもあったんだ。」


 「うん。」


 「でも今はたんぽぽちゃんのおかげで寂しくない。だからボク、本当にここへ来てよかったなぁって思うんだ。すっごく幸せだなって。」


 それを聞くと蒲公英姫はにっこりと微笑み、少し照れ臭そうに言いました。


 「私も同じだよ。あのね…ここへ来た時、実はすごく心細かったから…あの時手紙をくれた舞胡蝶姫に感謝してるの。ありがとうね。」


 「えへへ…」


 舞胡蝶姫には照れるとスイーツに蜜を掛け続けるくせがありました。溢れ返りそうなお皿の上を見ながら蒲公英姫はふと思い出しました。


 「そういえば一番最初に一緒にお茶会したときは、舞胡蝶姫が全部のスイーツに蜜をどばどば掛けちゃってびっくりしたなぁ。」


 「だってせっかくのお客様だもん、蜜たっぷりでおもてなししなきゃと思って!」


 誰しもがそれで喜ぶと信じて疑わない、まっすぐな舞胡蝶姫の様子がおかしくて、蒲公英姫は思わず吹き出しました。


 「ちょっとー!なんで笑うの?」


 「あはは、ごめんね…舞胡蝶姫らしくてつい」


 むくれる舞胡蝶姫の横でしばらくころころと笑っていた蒲公英姫ですが、ふと真顔になり何かを考えこみ始めました。舞胡蝶姫がきょとんとした顔で尋ねます。


 「どうしたの?」


 「あのね…急に思ったんだけど、この庭園にいるほかの徒花姫たちも、もしかしたら昔の私たちみたいに寂しいんじゃないかな?と思って…」


 「ほかの徒花姫たちも?」


 「前に一緒に散歩したとき見掛けたよね。二人して緊張してすぐに逃げちゃったけど…」


 「たしか…リボンの子と、傘を持ってる子と、大きなお花のかみかざりの子!」


 舞胡蝶姫はうーんと考え事するように腕を組んだかと思うと

 「そうだ!」と大きな声で言いました。


 「あの時みたいにお手紙書いてみない?みんなをボクたちのお茶会に招待するの!」


 「いいかも!」


 蒲公英姫は大きく頷きました。


 「二人のお茶会もいいけど、お友達はたくさんのほうがきっと楽しいよね。」


 二人はバタバタと立ち上がると、テーブルの上を片付けてさっそく招待状作りに取り掛かりました。名前も知らない、三人の仲間たちに思いを巡らせながら。

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