第4話・出会った二人

 眠りから目覚めた蒲公英姫は、あくびをしながらガゼボのカーテンを開けました。


 「やっぱり夢じゃない…」


 広がる景色を見て小さく呟きます。そしてふとすぐ足元に何かが落ちているのに気が付きました。


 「ん…?」  


 拾い上げてみるとそれは封筒です。宛名のところには『タンポポのかみかざりの女の子へ』と丸っこい字で書いてありました。


 「私のこと…だよね。」


 周りを見渡してみますが人影はありません。蒲公英姫はガゼボの中に戻り、椅子に腰かけるとそっと封筒を開けてみました。



 『こんにちは。

  とつぜんのおてがみで、ビックリさせちゃったらごめんね。

  ボクはまいこちょうひめ。

  サンクチュアリにちょっと前からすんでいます。

  もしよかったらボクのお茶会にきてくれませんか?

  おともだちになりたいです。』


 「まいこちょうひめ…?」


 手紙を読み終わった蒲公英姫は首をかしげました。どうやら寝ている間に他の徒花姫がやってきて、ガゼボの前に手紙を置いて行ったようです。

 おともだちになりたい、というストレートな言葉は、サンクチュアリに来たばかりで孤独な蒲公英姫にはとても嬉しいものでした。だけど…


 (お茶会に行きたくても、これじゃ一体どこに行ったらいいのか…)


 そこで蒲公英姫は、昨日マリーゴールドにもらったノートを破り、手紙の返事を書いて自分のガゼボの目につきやすい場所に貼っておこうと考えました。ですが返事を書き終えたところで、そもそも貼り付けるための道具を何も持っていないことに気が付いたのでした。


 「どうしようかなぁ…」


 蒲公英姫は何かいい案はないかと、手紙をもって外に出て周りを見回してみました。すると少し離れた茂みの陰で何かがが動くのが見えました。

 おそるおそる近付いてみるとそこには、小柄な女の子が顔を真っ赤にして身を必死に屈めて蹲っていたのでした。


 「あ、あの…」


 「えっと、えっと……ボク…」


 赤い薔薇と青い蝶のモチーフが印象的なドレスを着た、色白で可憐な少女でした。涙目であたふたする様子はまるで小動物のよう。少し幼く見えますが、年齢は自分と近いように思えました。


 「あ…もしかしてあなたがまいこちょうひめ?私にお手紙をくれた…」


 もしやと思って聞いてみると少女がこくこくと頷いたので、蒲公英姫はぱっと顔を輝かせ、先ほど書いた返事の手紙を差し出しました。少女は驚いた顔をして手紙を受け取ると、まだ震えている手でゆっくりと広げて読み始めました。


 『まいこちょうひめさんへ

  お手紙ありがとう。とってもうれしいです!

  ぜひお茶会に行きたいです。

  蒲公英姫より』

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