フェイタケ

鮭さん

第1話

 今テレビで話をしているビートたけしは偽物、フェイクたけし、本物のたけしはみみずの学校に潜り込んでミミズの動きを勉強をしているのだ。私の直感、チョカンが言った。


「おいフェイクたけし。フェイクの癖に何テレビに出てるんだ。フェイク、フェイクたけしめ。フェイクたけしめ。」


 テレビに向かって語りかけることをやめられない。止まらない。やめられない。止まらない。


「いやいや、そんなことあるはずないでしょう。そんなことあるはずないよ。うんうん。」


 理性はいった。


「いいや、彼は一生懸命勉強しているよ。うんうんうん。ほら、今だって土の中で体をくねくねさせてるよ。」


 チョカンが言った。


「助けなきゃいけない!!」


 思った。土の中でビートたけしは助けを待っているんだ。今行くぞたけし。今行くぞ。助けてあげるぞ。地面を掘るぞ。地面を掘るぞ。助けてあげるぞ。助けてあげるぞ。


 ほりほりほりほり、ほりほりほりほり、ほりほりほりほり


 地面を掘ります。ほりほりほり。地面を掘ります。ほりほりほり。


 ほりほりほりほり、ほりほりほりほり


 地面を掘るのは楽しいな。達成感があるな。楽しいな。やはり目に見えて結果が出るから良いですね。生産性がある作業です。地面を掘るのはいいですね。もう趣味にしてしまおうかしら。ずっと掘り続けていたいな。


 ほりほりほりほり、ほりほりほりほり


 プシャー!!


 なんだなんだ。温かい。温泉だ!!温泉だー!!温泉だー!!


 めでたいから、ピアノを弾こう。


 ポロンポロンポロンポロン、ポロンポロンポロンポロン


 プシャー!!


 ああ!!温泉がピアノにかかった!!おい!!どうしてくれるんだ!!おいおいおい!!これじゃあピアノから変な音が鳴っちまうじゃないか。おいおいおい、どうしてくれるんだどうしてくれるんだ。


 ピンポーン


 ん、チャイムの音?この大変な時に誰なんだ。


 そっち、門の方を向くと、男と目があった。なんと、フェイクたけしがにんまりと笑っていたのだ。


「ひっ!!ひひーっ!!食い殺されるー!!ひひーっ!!」


 私はパニックになってしまった。どうすればいいのだ。どこに逃げればいいのだ。一体、一体どうすればいいのだ。


「俺はフェイクたけしだ。」


 いつの間にか目の前に迫っていたフェイクたけしが言った。


「うわあああああああああああ!!うわあああああああああああ!!うぎゃああああああああああ!!」


 ドックドックドックドック


 胸が押されている。目を開けるとフェイクたけしが私の心臓をマッサージしている。ああ、フェイクたけし。助けてくれたのか。お前を恐れ、パニックになっていた私を。こんな私を助けてくれたのか。


「フェイたけ、お前、俺を助けてくれたのか?」


「フェイタケ、フェイタケ。」


 フェイタケはそう言って2回首を縦に振った。ありがとうフェイタケ、ありがとうフェイタケ。


「フェイタケはフェイタケ農場で生まれたのかい?」


 再び私のチョカンが言った。


「フェイタケ、フェイタケ。」


 フェイタケは嬉しそうににんまりと笑って首を縦に振るのであった。


 完


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フェイタケ 鮭さん @sakesan

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