第4話見られてはまずい存在を

私は一週間も経たず、白音さんと仲良くなり、昼休みや下校を共にすることが多くなった。

彼女と土曜日の朝に遊ぶ約束を交わしていた。

金曜日──昨夜からそわそわして、あまり眠れず、寝不足だ。

洗面所で顔を冷水で洗い、眠気を覚まそうとするが、一向に覚めない。

私から誘ったのに、こんな緊張するとは。

二時間も余裕があるのに呼吸が荒く、キッチンで朝食の支度をしている母親に「大丈夫っ、あんた?」と何度も心配された。


ピンポーン、ピンポーン。


「あっ、ああぅ......おはよう、沙穂ちゃん。さ、ささっ、さあ上がって」

「おっ、おはよう、ごじゃいっましゅっ......うぅぅっ、すっすすっ、涼原先輩ぃ~っ......」

二人して玄関で緊張した挨拶を交わした。

彼女に至っては噛み噛みで悶えていた。

いつもであれば、彼女の恥じらっている様子に癒されるが緊張しているのは彼女だけではなく、私自身も相当なテンパりである。


「ぅう~りゃあぁ~へへへぇ~なぁ~にしてるぅぅ~んでぇすかぁー。ぁたたたぁぁー、キイノちゃあぁ~っん、っぷふぅっ、がいるのぅー?」

と、ふわふわした呂律の回っていない甘ったるい声が近付いてきた。


おぼつかない足取りで近付いてきた姉が肩に体重を掛けてもたれ掛かり、絡んできた。

「酒くさっ!何で朝から飲んでんの?姉ちゃんってばぁっ!ちょっ、くさいってほんと!」

酒を飲みすぎているようで、頬を赤らめ、酔っぱらっていた姉を引き剥がそうとするが離れまいとしがみついてきた。


「うっ......けほけほっ、涼原先輩にお姉さんがいたんですね」

姉の息がにおってきて、顔を歪め、咳き込みながら、口にした。

鼻と口を掌で覆いながらの彼女。

「そう、おほっごほっごほっっ......だよ」

酔っぱらいの姉をリビングのソファーに寝転がせ、白音さんを自室に招いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る