第2話可愛い後輩と手を繋ぎ──

私は、本を開きページを捲っている彼女のもとまで近付いて、優しく肩を叩いた。

「あのっ、もう下校時間だよ」

彼女は、肩を叩かれたことに驚き、小さく可愛い悲鳴をあげて、こちらに顔を向ける。

「ひゃあっ、なっななっなんですか?」

黒髪のロングヘアーで、清楚な印象を受ける彼女から、可愛い悲鳴が聞けるなんて。

「下校時間ぎりぎりなんだけど......帰らないと」

「下校時間?あっ、もうこんな時間に......ありがとう、ございます。えっと......」

テーブルに置いていたスマホを手に取り、時刻を確認して、頭を小さくさげてお礼を言って、戸惑う。

「涼原だよ。二年で涼原陽香」

私は、自己紹介をした。

「私は、白音沙穂しらねさほです。一年生です」

「そうなんだ。やっぱり一年なんだ、見掛けないから。いつも放課後に来てるの、図書室には?」

「はっははいっ、放課後にはいつも来てます」

緊張しているようで、返事がつっかえていた。

微笑ましいな、白音さんの反応を見ていると。

「緊張しないでいいよ、白音さん。へぇー、いつも来てるんだ。何かおすすめってある、白音さん?」

「はい......えっ、ええーっと......どういったジャンルの本を読んでいるんですか、涼原先輩?」

「恋愛ものでときめくのが好きだよ。私と歳が近い学生の話がいいなぁ」

「そうなると──」

彼女は、目を輝かせ、前のめりになりながら熱心に教えてくれた。

「ありがとう。読んでみるよ、白音さんがおすすめしてくれた本」

「ぜひ読んでください。気に入ると思います」

「うん。そろそろ図書室出ないと昇降口閉められるよ、一緒に帰ろっ」

「そうですね。って、えっと一緒にですか?」

「そうっ!立って、一緒に帰るよ!はいっ」

明るく弾んだ声で、こたえて彼女が立ち上がると同時に手を取り、扉近くの返却口まで走り本を置き、図書室を出ていく。


息を弾ませながら昇降口を抜けて、校門を抜けたところで、足をとめ呼吸を整える私たち。

「はぁはぁ......はぁはぁ。危なかったね、沙穂ちゃん」

「はぁはぁ、はぁはぁはぁぁっ......そっそう、そうでっすぅっはぁ......はぁはぁ、ねっはぁはぁ......さっはぁ、沙穂ちゃん?」

「だめかな、沙穂ちゃんって。馴れ馴れしくて嫌だった?」

「嫌というわけでは......」

彼女は、膝に手を付き、アスファルトに視線を落としながらこたえる。

「よかったぁっ!疲れたね、沙穂ちゃん。カフェとかどうかな?」

「はい。大丈夫です」

「少ししてから歩こっか」



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