第9話

新聞屋に入るとなんだか埃っぽくてケホケホとむせてしまった。


奥から誰だい?と男性の野太い声がした。


「あ、えーと、すみません、新聞屋さんでしょうか?」


恐る恐る尋ねてみると、そうだ。と短い返事が返ってくる。


「すみません、私、情報を売りにきたんですけど…」


なんだか思っていたところと全然違っていてびっくりする。


しかし、実際こんなものなのだろうか?


きっと私が世間知らずなだけなのだろう。


薄暗い奥の方から頑固そうな白髭で白髪のお爺さんが出てきた。


「あ、あの~…」

恐る恐る声をかけてみる。


「いくらだ?」


「は、はいっ?」


私はお爺さんの態度にすっかり萎縮してしまう。


「いくらの情報だ?」


「あ、えーと、多分大きい情報かな~と思います。」


自分にどれだけの価値があるか分からないが、まあ、大きな情報だろうと信じたい。


「何の情報だ?」


「あ、はい。アルミール家の情報です。」


そういうとお爺さんはぴくっと眉間に皺を寄せた。


「アルミール家だと?」


お爺さんからの威圧感が先ほどにも増して私は少し震えながら答えた。


「は、はい、私、あの、アルミール家の者なのですが…」


そこでハッと気付く。


このお爺さんをまだ信用していないのに、身分をバラしても大丈夫なのだろうか?


「お前が、アルミール家の者だと?」


ギロリと睨みつけられる。

私は恐怖を必死に抑えながら答える。

「あ、私はアルミール家に使えてるメイドでして!」


咄嗟に変な嘘を吐いてしまったが、今まで召使い同然の扱いされていたのであながち間違いでもないだろう。


「情報は、また第一お嬢様の我が儘っぷりか?」


「はい…え?」


私は咄嗟に返事をしたが、その内容に驚きを隠せない。


「我が儘っぷりとは?」


私は逆に質問する。

なんせ第一お嬢様とは恐らく私のことであろう。


「なんだ、情報売りに来といてそんなことも知らんのか、最近アルミール家のニュースと言ったらそればかりだろう。」


「え?」


私は何が起こってるのか分からないという顔をした。


それを察したお爺さんは、はあ、とため息をつい後、店の奥の方に引っ込んでいってしまった。


「あ、あの!」


お爺さんは薄暗くて、見えづらかったが、ロッキングチェアに腰を掛けて新聞を開き出した。


「××年○月○日

ステラお嬢様暴れてドレスを破いてしまう。」


「××年○月△日

ステラお嬢様靴が気に食わないと高級ハイヒールを捨ててしまう」


「××年○月◇日

ステラお嬢様好き嫌いで食べ物を床にこぼす」


「そんな、何それ…」


私は絶句した。

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