第10話
「ここに書いてある記事は、本物か?」
お爺さんは新聞から顔をあげ真っ直ぐ私の目を見つけてきた。
私はギュッと両の手に力を入れて宣言する。
「それは、100%間違いです。
それをしたのは、継母と妹たちです。」
お爺さんはほう、と呟いた後、更に質問を続けた。
「それなら、証拠は?」
私は鞄から破かれた落書きだらけの本を出してお爺さんに見せつけた。
「これは、妹たちがやったものです。
落書きの内容を見れば一目瞭然かと。」
「見せてみろ。」
お爺さんは私から本を半ば奪い取る様に取り上げた。
1ページずつゆっくりと落書きの方を読んでいく。
そこには私への暴言や悪口がたっぷりと書かれている。
「お嬢さん、あんたでかしたな!」
お爺さんが目を見開いて私の肩をグッと握った。
とてもご老人とは思えないほどの力で思わずたじろいでしまう。
「俺はな、証拠がないネタが大っ嫌いなんだ。お嬢様のネタは破れたドレスとか汚れたハイヒールとか持ってこられたけど、どれも何だか自作自演くさくてな。
しかも情報を持ってくる奴ら、金をやるからネタにしろって言うんだ!怪しいよな?
ネタを売りにではなくネタを作りにきてるんだからよ!」
お爺さんは意気揚々と喋りだす。
まさか、私は世間でそんな風にネタにされていたなんて。
恐らく継母の仕業であろう。
私がいつかお屋敷から逃げ出しても、世間で爪弾きに合う様にしていたのか。
あるいは腹いせなのか。
何であれ、これは逆にチャンスだ。
今までの私の印象が最悪な状態から、実は真相は真逆だと民衆が知ったら?
今まで私を悪者扱いしていたのも相まってアルミール家はそうとう責められることは間違いないだろう。
「いやー、しかしまさかご本人様が自ら情報を提供するなんてな!」
お爺さんは何かに取り憑かれた様に筆を紙に走らせている。
「え?ご本人?」
私はまだすっとぼけようとしたが無駄だった。
「今までもステラお嬢様を擁護すると、元メイドたちが何人か来ていたけれど、誰も証拠なんてなかった。
みんな口を揃えて言ってたんだ。お嬢様ご本人なら証拠があるのにってさ!」
私はびっくりした。
恐らく情報を売りに来ていたのは、辞めさせられたメイドたちだ。
彼女たちはクビになっても、なお私の味方でいてくれたのだ。
私は涙が出てきそうになる。
「お嬢さん、あんた他にも証拠品あるんだろ?全部見せろ!
おじさんが面白おかしくネタにしてやるぜ!」
お爺さんの眼はまるで宝物を見つけた子供の様にキラキラと輝いていた。
きっと、本当に嘘が嫌いな方なのだろう。
私はお爺さんを信じて、鞄の中の証拠品を全部渡した。
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