第6話

言われるがままに私はフードの男性について行く。


もし私が公爵の娘だと知られていたら、また違う展開だったのかもしれないが、今の私は使用人同然の格好に加えて下水や森を歩いてきた為、服も顔もどこもかしこもボロボロだった。


そんな娘が公爵の娘だなんて誰も気づきはしないだろう。


「さあ、着いたよ。」

そう言って男性は明かりがもう着いていない宿屋に入っていく。


私も後を追って入る。


宿の中は申し訳程度に灯りが灯っていた。


「もう店主も寝てるからね、なるべく静かに。」


そう言われて、私も静かに案内について行く。


そして、廊下の突き当たりの1番奥の部屋に案内された。


「じゃあ、この部屋に今夜は泊まりなよ、俺は朝まで恐らく付き合わされて帰ってこないだろうから。」


そう言って男性はそれじゃあ、と去っていこうとした。


「え、何で?」


私は目を丸くした。


確かに泊まる場所が無いと頼ったが、見ず知らずのみすぼらしい少女に一部屋ポンと理由も聞かずに貸し与えられるものなのだろうか?


「ちょ、声が大きいよ。

何でって、君が泊まる部屋がないから、俺が泊まってる部屋に案内しただけだよ。」


続けて少年は答えた。

「本当は他の空いてる部屋を借りたいけれど、店主はもう寝ちゃってるし、今晩だけでも相部屋になるのは我慢してくれないか?俺は朝まで帰らないから、好きに使ってくれて構わない。

シャワーもあるから適当に使ってくれていい。」


「え?え?」

私はキョトンとする。

待遇の良さにびっくりしてしまう。

見ず知らずの相手に向かっていくら何でも親切すぎるのでは?


「あの、お金は?」

「え、いいよ別に、俺は金に困ってないし。」


じゃあ、俺もう行かないとだから、とフードの少年は去っていってしまった。


ふと部屋の鏡を見る。


そこにはボロボロの少女の姿が映っていた。


「シャワー浴びていいって言ってたわよね?お金はまあ朝にでも渡した方がいいわよね?」


そう思考をぐるぐるさせながらも私はさっさとシャワーを浴びて、髪も乾かさずに布団に潜った。


とにかく疲れきっていたのだ。


ベッドは流石にお屋敷のベッドよりも硬かったが、何故だかいつもより安心する。


ああ、でも髪くらい乾かさなくては、風邪をひいてしまうかもしれない。


でもその前にちょっとだけ休もう。


そんなことを考えながら、私は気づいたら深い眠りに落ちていた。

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