第4話

時刻は深夜0時を回る頃。


私は目を覚ました。


いつも眠りが浅い為、人に起こされなくても覚醒するのに時間はかからなかった。


「さあ、出発しましょう!」


私は小さな声で意気込んだ。


まずは自室の窓を開ける。


本来私の部屋は3階の日当たりのいい部屋だったのだが、妹のリゼに「その部屋頂戴!」と我が儘を言われ、気づいたら盗られていたため、私は使用人が使っていない1階の隅の空き部屋を自室にしていた。


そのお陰で、脱出の難易度は遥かに下がる。


私は窓の外に荷物を出して、自身も外に出る。


問題はここからだ。


家の周りにはぐるりと恐らく3メート程の鉄の柵で覆われている。


そして門には外と中に合わせて4人の門番が見張っている。


とてもではないが、門からは出られない。


しかし、柵を登ることは出来ると言えば出来る。

柵の内側付近に大きな木が生えており、そこを登って柵の1番上にロープを結び、そこから蔦って降りることは可能と言えば可能だ。


だが、それだとロープが回収出来ない。

すぐにそこから脱出したとバレてしまう。


そこで私はそれを逆手にとることにした。


私は木をなんとか登り、柵の上にロープをかける。


しかし、私はここからは脱出しない。


要はカムフラージュというわけだ。


そして、私はもう一箇所の脱出口に向かうとする。


「これね。」


私はお屋敷の裏側の方まで歩いてきた。


しかしこう外からぐるりと回るだけでもお屋敷の広さには眩暈がする。


着いた先には、下水を引くための穴が空いており、石で出来た蓋で塞がれている。


石の蓋には鍵がされていない為、少し重たいが、ずらす事は私にも可能だ。


「さて、しかしこれまた酷いわね…」


蓋をずらして中を伺い私は絶句してしまう。


なんせ開けた先には下に続く鉄梯子があるのだが、虫は蠢いているわ、鉄は錆びてるわ、下水のドブ臭い匂いもまして鼻を覆いたくなる刺激臭がするのだ。


「まあ、これも試練の一つね、仕方ない。」


恐らく貴族で下水を通る発想など、今お屋敷にいる人たちは誰一人気づかないだろう。



私は腹を括って梯子に手をかける。

一段一段と降りていき、下に着いたら持ってきた荷物の中から蝋燭とマッチを取り出して蝋燭台に立て火を点ける。


「さて、証拠を消さなきゃね。」


私は蝋燭台を地面に置き、また梯子を登る。

そして、ずらした蓋を下からまたずらし直す。


蓋がまた完全に閉まると、辺りは真っ暗で怖さが倍増する。


「気をつけて下に降りなきゃ…」

先程よりも慎重にゆっくり降りていく。


しかし、蝋燭の火が見えて安心した瞬間、足を踏み外してしまった。


「キ、キャア!」


あいにく地面が近かったため、軽い尻餅だけで済んだ。


しかし、尻餅をついたすぐ横は下水が通っている為、危うく落ちる所だった。間一髪である。


「あ、危なかった…」


私はすぐ様蝋燭台を持ち、辺りを照らしてみる。


道は左右に分かれていた。


「どっちに行けば、より遠くへ出られるかしら?」


まず右の道へ行くが、5分ほど歩くと行き止まりになっていた。


なので、引き換えして左の道を進んでいく。


生憎下水の中は一本道で、迷うことはないのだが、どこまでいけばいいのだろうか?


当てもなく2時間ほど歩いたあたりで、外へ続く梯子をやっと見つけた。

そこを目当てに歩いていくと、僅かだが風の流れを感じる。


梯子付近も整備はされておらず、落ち葉やゴミが散乱している。


はっきり言ってお屋敷から入った所よりも更に汚い。

しかし、もう他に行く道もない私は、腹を括って梯子を登る。


梯子を登り切ると、こちらの下水の穴には蓋がされていなかった。


恐る恐る地上へ顔を出すと、視界には木々が生い茂っているのが見えた。

どうやら森の中のようだ。


梯子を登り切り外に出ると私はもうヘトヘトだった。


覚悟はしていたが、やはりお屋敷でもう少し体力をつけておけば良かったと後悔する。


下水の穴の近くにはボロボロになって壊れている蓋が近くに落ちていた。


「成る程、森の中で整備する人がいないから、こんなにボロボロなのね」


私は辺りをキョロキョロと見渡した。

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