第21話
勉強嫌いの優花ちゃんに、歴史漫画(邪馬台国編)を渡して1週間。
実際に参考書に出てくる問題をやらせてみると、91点と高得点を叩き出した。
やっぱり、興味があるとないのではヤル気が違うね!
「凄いね。91点だよ!」
「でも、漫画から出題された問題でしょう? 点数が取れても意味ないと思う……」
「違うよ。この参考書を使ってます」
中学生・高校生・大学生が使う参考書を出して、付箋を貼った場所を捲って見せる。
優花ちゃんに合わせて、難しい漢字を使わないように工夫したが、問題分はほぼ参考書のままである。
「……うそ」
「嘘じゃないよ。優花ちゃんの答案が証明しているでしょう。単語を覚えるだけだと、直ぐに忘れてしまう。登場人物の性格や、生き様を知ると親近感が湧いたでしょう?」
「うん」
「歴史の覚え方は、ただ暗記するだけじゃなくて、時代の背景や人物の人柄も一緒に覚えると覚えやすいんだよ」
「でも、他の教科も苦手だよ……」
しょんぼりする優花ちゃんに、私はニッコリと笑みを浮かべて言った。
「大丈夫。覚えるコツを伝授してあげる!」
私は、優花ちゃんの耳元で覚える秘訣を教えてあげた。
聞き終えた彼女は、目を丸くして聞いた。
「本当にこれだけで良いの?」
「うん。まずは、それだけで良いよ。優花ちゃん、1日で4冊は本を読んでるでしょう。分厚い小説ばかり」
500~1000ページくらいの本を4~5冊以上読んでいる彼女なら、1日1教科書を読むくらい数分で読み終えてしまうだろう。
実際、彼女のスキルに速読がある。
暗記も持っているので、多分興味のある内容ならば暗記スキルが働くのだと思う。
「読んでいて、気になったら調べて先生に教えてくれるかな?」
「うん!
そう言うと、優花ちゃんは満面の笑みを浮かべて任せてと胸を張って頷いた。
これで勉強嫌いからの脱却の第一歩が踏み出せただろう。
後は、上手く微調整しつつ興味を持続させることに注視して、様子を見よう。
「優花ちゃんの好きな教科からやってみようか」
「うん」
優花ちゃんは、国語の教科書を引っ張り出してきて読み始めた。
この子、国語の成績は非常に良いんだよなぁ。
読書をしているからか、読みは出来ている。
漢字を書くのは苦手なようだが、追々と覚えて貰おう。
優香ちゃんの成績は、その後少しずつ上がっていき、理数系の勉強以外は大好きというくらいまで成長してくれた。
落ちこぼれ筆頭の優花ちゃんの成績が上がったことで、勉強に悩む子供たちが私のところに押しかけて来た。
違うホームの子もいる。
基本、受け持ちのホームの子以外は担当の先生にお任せするのが暗黙のルールになっている。
しかし、今回は『成績を上げるために、嫌いな勉強を楽しく教わりたい』という心構えなので、他の先生も強く咎めることが出来ないでいるようだ。
流石に私の身体は一つしかないので、3ホームと4ホームは優花ちゃんにお任せした。
教えることも勉強になるよ~と唆すと、あっさりと乗ってくれた。チョロイな。
月曜日と水曜日を1・2ホーム、火曜日と木曜日を5ホームと6ホーム、金曜日と土曜日を3ホームと4ホームといった具合に分けて勉強を教えることになった。
基本的に宿題と別に1時間ほど教えるといった感じである。勿論、同期入社の同僚も補助に入って貰うことになっている。
知識は生涯の財産になる。
年食ってから勉強するよりも、若いうちに勉強しておいた方が、後悔は少ないと思うのは私のエゴかもしれない。
それに、施設にいる間に取れるだけの資格を取って貰いたい。
資格を取るにしても、お金がかかる。
無資格で高校を卒業して、社会に放り出されるよりも、少しでも多く資格を取って社会に出た方がマシと言えるだろう。
子供たち全員が資格取得を希望すると凄い金額になるが、児童手当が市から支給されるので問題はないだろう。
私は、子供たち一人一人に適正がありそうな資格を取得するように少しばかり誘導しつつ、勉強を教えることにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます