第17話

 お早う御座います。今日から新職場でお仕事です!

 副業でそこそこ稼いでいるじゃないかと、ツッコミが入りそうですが、あれはあくまで副業。

 副業とは、前職の様に理不尽にリストラにあったり、何らかの原因で働けなくなったりした場合の保険である。

 入社日は、スーツを着ていくことを選んだ。

 前職も営業だったのでスーツは着用していたが、中のシャツは結構ラフなものが多かったのでTHE リクルートといった感じのシャツを新しく買いました。

 アイロンがけするのが面倒臭いので、形状記憶シャツ(白)です。

 勿論、着替えられるようにジャージとエプロンも用意してあります。

 職場となる児童養護施設の近くにある東陽とうよう市立中学校の指定ジャージを購入している。

 学校指定のジャージは、ダサイけど使い勝手が良いんです。

 一番成長する時期の子供に合わせて作られているからというのが一番の理由。

 しかし、ジャージがダサイままなのは昭和の経済成長期の名残が今も残っているからだそうで。

 学校指定のジャージは、他の学校と区別がつくようにデザインしなければならない。

 全国に市立・私立合わせれば数万校はあるので、一々デザインを考えるのが面倒臭い。

 手っ取り早く色違いのジャージを作れば良いじゃんとなるわけだ。

 実際、私の住む町の中高のジャージは色が違うだけで形はほとんど一緒のため、子供たちに親近感を持ってもらうために中学校の小豆色芋ジャージを買いました。

 ジャージの中に着る体操服も購入してあります。

 ちゃんと替え用も購入しているので、汚れても大丈夫!

 私の私物は、収納に全部入っている。

 忘れ物をすることは無いが、人前で見せれるスキルではないので、カモフラージュのために前職で使って行った鞄を持って行きます。

 中は、鶯宿おうしゅくのおやつが入っているくらいだ。

 施設には、猫用のトイレやグッズがあるので、それを使わせて貰うことになる。

「おーちゃん、今日から新しいお仕事だよ~。お散歩の準備しようね」

 にゃぉんと一声鳴き、タタッと駆け足で寄ってくる鶯宿おうしゅくを捕まえてリードを着ける。

 すると、早くと言わんばかりに玄関に向かっていくのだ。

 これは、これで可愛い!

 猫はツンデレと聞くが、鶯宿おうしゅくはワンコ属性が入っているんじゃないか? と思ってしまう。

 まあ、人見知りはするが軽度なので1時間もすれば新しい環境になれてくれる。

 最近では、散歩中に出会う野良猫たちとコミュニケーションをしているらしく、時々家のベランダに猫たちが謎の集会をしているところを目撃することがあった。

 鶯宿おうしゅくが、このあたりのボス的ボジションではなく、ボスに超気に入られている舎弟的ポジションらしい。

 私は、慣れた散歩道をずんずんと歩く鶯宿おうしゅくを隠し撮りしつつ新しい職場へと向かった。



 新しい職場は、一言でプチ動物園? と言えるくらい動物が溢れていた。

 外には雑種のワンコが2匹、通い猫が鶯宿おうしゅくを含めて5匹、先住猫が3匹、インコが7羽、文鳥2羽、カメ1匹、ヘビ2匹、鶏5羽、兎1羽と多い。

 因みに金魚は、数えきれないくらいいたと付け加えておく。

 児童養護施設菊水園きくすいえんには、別当の乳幼児棟と本館に分かれている。

 乳幼児棟は0歳~3歳までが暮らしており、ベテランの先生が配属されている。

 本館は4~18歳までの子供が生活しており、1~6ホームまであり、奇数が男子、偶数が女子と別れて生活している。

 1つのホームに約10~14人が集団生活しており、職員が受け持つ数は1人あたり3~4人となる。

 私は保育補助士なので、子供たちを担当することは出来ない。

 担当しない分、雑務をこなすことが中心となる。

 それとは別に子供たちの心のケアをして欲しいとも言われているので、メンタルケア心理専門士として働く場面もあるだろう。

 私の配属先は、3ホームと4ホームを担当することになった。

 入社式の時に、鶯宿おうしゅくも一緒に紹介するとお局様が異様に頬を赤らめて鶯宿おうしゅくをガン見していたのは少し怖かった。

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