第10話
一通は会社宛て、もう一通は
しかし、私の予想は大きく外れて双方から弁護士事務所へ連絡が入ったと弁護士から連絡を貰った。
「内容証明が届いた当日に連絡がくるとは、少し予想外です」
「あちらも相当焦っているようで、会社が大変みたいですよ」
と担当弁護士が教えてくれた。
私の時限爆弾は、良い感じに起動してくれたようだ。
「面会を求められていますが、どうされますか?」
「気持ちは、お断り一択なんですけど。無様な姿を見てみたい気もします」
正直な返答をしたら、弁護士さんも苦笑いを零している。
「会うと面倒事は避けられませんよ?」
「分かっています。慰謝料などの回収もしたいので一度、面と向かって会います。日時について、相手から何か言われてますか?」
「早急に会って欲しいとだけ言われています」
余程切羽詰まっているのだろう。
どこまで落ちぶれていくのか見ものだ。
「弁護士同伴を条件に会いましょう。弁護士さんの都合で構いませんよ」
「分かりました。少しお待ち下さい。予定を確認します」
そう言うと保留音に切り替わり、5分ほどで保留が解除された。
「お待たせしました。直近で土曜日の14時40分から15時までなら開いています」
「では、その時間を指定して下さい。場所は、弁護士事務所でも良いですか?」
「15時半から別件が入っているので、ファミレスやカフェなどが好ましいですね。居座られても、席を外せば良いだけですし」
となかなかに辛辣な事を言っている。
弁護士の言葉からするに、
私だけを担当しているわけではないので、時間がタイトになってしまうのは仕方がない。
相手にそれが通用するかどうかは置いておいて、私は土曜日の14時40分から15時までなら会うということを弁護士経由で伝えて貰う事にした。
勿論、
あっという間に約束の土曜日が来ました。
その間も、固定電話とスマートフォンの着信がヤバイことになっている。
会社の株も大暴落しているので、潰れるのも時間の問題だ。
弁護士事務所に寄ってから、指定したカフェに着くと、既に
「皆さん、お久しぶりです。私は、ホットコーヒーをお願いします」
向かい側に座り、ウエイトレスにコーヒーの注文を頼む。
「私は、メロンソーダーでお願いします」
と弁護士はジュースを頼んでいた。
注文を終えて、三人に向き直る。
顔面蒼白になる社長と
「
にこやかに笑みを浮かべながら、名刺を渡している。
名刺交換が終わり、時間が無いと前置きを置いて本題に入った。
「内容証明で明記した通り、こちらの要望に変更はありません」
と、佐藤の先制攻撃が出る。
「あの金額を払えない。会社に、そんなお金はないんだ。給与も増やす。だから戻ってきてくれないか?」
「嫌ですよ。入社当初から残業代や休日出勤の手当てを頂けてない上に、ハラスメントのオンパレードで心も身体も疲れているんです。それに、私に解雇を言い渡したのは会社ですよね。今更戻れとは虫が良すぎます。弁護士費用も馬鹿にならないんですよ」
勝訴すれば、弁護士費用諸々負担させるつもりでいるけどな!
「君が、
逆ギレする社長に、鼻で嗤ってやった。
「引継ぎしましたよ。パソコンにもデータを残しましたし、引継ぎマニュアルを紙でも残しました。その様子を従業員が見ている前で、再三引継ぎ事項に関して
「ぐっ……そんなもの、適当に誰かに言わせれば証拠にならないだろうが」
悪あがきなのか、唾を飛ばしながら反撃してくる社長と
うん、汚いね。物理的に。
「その時のやり取りの動画ならあります。仕事で使用している録画機能搭載のペンです。商談でよく利用していたものです。因みに、ハラスメントの現場もばっちり記録してありますからね」
持ってきたノートパソコンにつないで、
「
「
弁護士からのストップが入り、私は言いたいことが言えたので席を立った。
後ろから懇願する声が聞こえてくるが、一度振り返り満面の笑みで釘を刺す。
「示談には応じませんので、お覚悟を」
その言葉に、三人が呆けたように真っ白になっているのを見て笑いが零れるのが押さえられなかった。
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